1990年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)を代表するバスケ漫画の金字塔、井上雄彦氏の『SLAM DUNK(スラムダンク)』。新作映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開日(2022年12月3日)も発表され、令和になった現在も注目を集めている稀代の名作だ。
その新作映画用に描かれた新ビジュアルの中に、2つの拳を合わせた“グータッチ”のイラストが含まれているように、同作には戦う男たちが試合中に見せた、熱い抱擁やハイタッチなどにまつわる名シーンも多い。
そこで今回は『スラムダンク』の作中で選手たちが披露した、いまだに印象的に残っている熱いスキンシップのシーンをご紹介したい。
※以下には、コミック『スラムダンク』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、漫画およびアニメをまだご覧になっていない方、意図せぬネタバレが気になる方はご注意ください。
■赤木剛憲と魚住純の涙の抱擁
神奈川県のインターハイ最終予選。全国行きの残る1つの椅子をかけ、湘北と陵南が激闘を繰り広げる。湘北には赤木剛憲、陵南には魚住純という、3年生キャプテンかつ大柄のセンターがいるのが両チームの共通点。この二人は1年生の頃からライバルとして、互いに意識し合ってきた。
そんな二人がマッチアップした高校最後の試合。両者ともに4ファウルとなり、あとがない状態にもかかわらず、大黒柱としてチームを支える。ギリギリまでどちらに転ぶか分からない緊迫した展開の中、僅差で勝利したのは湘北だった。
両チーム、試合終了のあいさつを交わしたあと、赤木と魚住は互いに近づいていく。そして2人とも無言のまま、おもむろに「ガシッ」と抱き合うと、何も言わずに涙を流したのだった。
チームのキャプテンという重責を担った、それぞれをねぎらうかのような温かいスキンシップ。それを静かに見守るような、両チームのメンバーの姿も良かった。もっと言えば、抱擁しながら泣いている赤木&魚住の顔が兄弟のようによく似たゴリラ顔だったのも、このシーンを忘れられない理由の1つかもしれない。
■赤木剛憲&三井寿のグータッチ
インターハイ2回戦で、湘北は日本の高校界の頂点に君臨する「山王工業」と対戦。前半は2点リードで折り返したものの、後半に入ると山王のオールコートゾーンプレスに苦しめられ、湘北は大きなリードを許してしまう。
キャプテンの赤木は、日本を代表するセンター河田雅史を意識しすぎるあまり、動きに精彩を欠いていた。だが花道や、観客の魚住にまで発破をかけられ、ようやく赤木は本来の実力を発揮する。
苦境を打開するため、赤木がアイコンタクトを送ったのは、序盤からハードなマークを受けて疲労困憊だった三井寿。その赤木の期待に応えるかのように動き出し、宮城からのパスを受けた三井は、起死回生のスリーポイントを見事に決めてみせた。
息が上がり、疲労でヨレヨレの三井は、並走する赤木と無言のまま拳を合わせる。そしてこの二人の様子を見ていた副キャプテンの木暮公延は、過去にいがみ合っていた赤木と三井の姿を思い出しながら、「2年間も待たせやがって……」と心の中でつぶやくのだ。
絶体絶命のピンチともいえる苦しい状況下で、赤木が頼りにしたのが同学年の三井という点が泣ける。おそらく赤木は三井の疲労も分かった上で、それでも彼のスリーポイントを信頼して賭けたのだろう。その期待に応えた三井も素晴らしく、あのグータッチにはいろんな想いがこめられているように思えた。