■死んだ犬の名を引き継ぎ養父を壊してしまった異形の腕を持つ少年

 次は、2004年から『週刊少年ジャンプ』で連載が開始され、その後さまざまなジャンプ系列に移籍し執筆が続く星野桂氏の『D.Gray-man』。千年伯爵により作られた「AKUMA(アクマ)」を唯一破壊できる神の武器・イノセンスに選ばれた「エクソシスト」たちの戦いを描いたダーク・ファンタジー漫画だ。

 主人公のアレン・ウォーカーは誰に対しても丁寧な言葉遣いで接する、礼儀正しくさわやかな印象を与える少年である。ひょろりとした体形とは裏腹に驚くほどの大食いで、画才はほぼなく酷い方向音痴。明るく前向きだがネガティブな面もあるなど好人物とも言える彼だが、その生い立ちは過酷なものであった。

 アレンはイノセンスに寄生された醜い左腕のために実の親に捨てられ、サーカスに買われてしまう。当時のアレンには名前も無く、異様な左腕の見た目から周囲に「赤腕」と呼ばれていた。そんな「赤腕」を引き取ったのが旅芸人のマナ・ウォーカーで、マナは死んだ飼い犬の名前を引き継がせて彼に「アレン」と名づけるのだった。

 だが、あるとき育ての親であったマナが死亡。そして、アレンは通りかかった千年伯爵の誘いに乗ってしまい、マナの魂をアクマにしてしまう。アクマとなったマナに殺されかけたアレンは、このときに傷つけられた左眼が呪いとなりアクマの魂が見えるようになる。そして左腕のイノセンスが勝手に発動し、アレンはマナを破壊してしまうのだった。

 その後は「黒の教団」のクロス・マリアン元帥に拾われるものの、クロスがこしらえる借金でアレンの苦労は絶えないようだ。現在『ジャンプSQ. RISE』で連載されている本作での活躍を期待したいと思う。

 作中での彼らはいつも明るく周囲を楽しませているものの、笑顔の陰で過酷すぎる生い立ちを秘めている。自らが背負う苦しみをまるで乗り越えるよう、前に進み続ける姿に読者は魅了されるのだ。そんな彼らだからこそ、本当の幸せを迎える日までファンは応援せずにはいられないのかもしれない。

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