ゲリラ部隊に育てられた『シティーハンター』サーカスに買われた『D.Gray-man』笑顔の奥に悲しい過去を隠す…ジャンプ漫画主人公たちの「過酷すぎる生い立ち」の画像
『シティーハンター』(コアミックス)第1巻・書影より

 漫画の主人公には不幸な生い立ちを持つ者が意外にも多い。たとえば、『ブラック・エンジェルズ』の主人公・雪藤洋士は早くに両親を亡くしており、唯一の肉親であった姉が無実の罪で自殺へと追い詰められている。『ベルセルク』のガッツは戦地で死んだ母親から生まれたうえに、もっとも信用していた保護者から残酷な裏切り方をされてしまう。他にも『GUNSLINGER GIRL』のヘンリエッタや『辺獄のシュヴェスタ』のエラなどは、少女ながらその生い立ちや試練は凄まじいものである。

 物語のキャラクターが自身の生い立ちや運命に苦悩し、そこから生まれる悲劇は読者の心に鉛のような重い感情を落とし込むと同時に、幸せを祈らずにはいられない。物語の中で過酷な人生に立ち向かう彼らの姿は魅力的でもあるからだ。

 多くの有名・名作を輩出し続ける『週刊少年ジャンプ』において、『NARUTO-ナルト-』や『チェンソーマン』など悲惨なスタートをひっくり返した主人公も少なくないが、あまりにも惨い生い立ちを隠した主人公もいた。そこで今回、普段は明るいジャンプ漫画主人公たちのギャップのある過酷すぎる生い立ちを振り返りたい。

※以下には、コミックやアニメ『シティーハンター』『D.Gray-man』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、漫画をまだご覧になっていない方、意図せぬネタバレが気になる方はご注意ください。

■本当の年齢や名前を知らずに生きてきた孤独なスイーパー

 まずは、1985年から1991年まで『週刊少年ジャンプ』で連載されていた北条司氏による『シティーハンター』から。同作は、新宿を拠点に活躍するスイーパー・冴羽獠を中心に巻き起こる、ハードボイルドとラブコメの両面を持つアクション漫画だ。

 今年テレビアニメの放送開始から35周年を迎え、2019年の映画『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』に続く新作映画の制作も発表されるなど、主人公の獠は今なお絶大な人気を誇るキャラ。

 美人に目がなく、いつも陽気で明るいイメージがある一方、獠の経歴は長らく謎に包まれていた。だが、彼の過去については198話「涙のバースデー」で、最初のパートナーであるブラッディー・マリィーの口から語られている。

 獠は物心もつかないほど幼い頃に、家族と乗っていた飛行機が南米の内乱地域で墜落するという事故にあっていた。同乗していた両親は亡くなってしまい、唯一の生存者となった彼は何日もジャングルをさまよった末に反政府ゲリラ部隊のある村に拾われた。そうして生きていくため幼い頃よりゲリラ戦士として戦うことになるのだが、彼のすぐれた戦闘技術や身のこなしなどはこの頃に培われたものだったのだ。

 当時幼かった彼がかろうじて覚えていたのは「リョウ」という名前だけで、姓の「冴羽」はゲリラに所属していた日系人・海原神につけてもらったもの。つまり、冴羽は自身の本名や生年月日、見た目が日系人だろうというだけで国籍さえ不明の人間なのである。いつしか海原を「親父」と呼び慕うようになった獠だが、長引く戦乱で海原は正気を失い、酷い裏切りを受けてしまう。

 このように壮絶な生い立ちを抱える獠に、生年月日を与えたのが現相棒である槇村香だった。中年は嫌だとごねる獠の年齢を30歳とし、「3月26日」を誕生日とした香。その理由について香は口にしなかったが、これは獠と香が初めて出会った日にちなんでのことだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3