■最強最高の男は最期までかっこよすぎた…牛山辰馬の散り際

 最後に、“不敗の牛山”こと牛山辰馬のかっこよすぎる散り際について紹介していく。彼はその二つ名の通り、肉弾戦では敵なしの強さを誇り、ヒグマや武装した兵士を素手で撃退するという化け物じみた戦闘能力を見せつけている。

 最終決戦でも牛山の規格外っぷりは相変わらずだった。彼を含めた杉元・土方一派は、五稜郭で第七師団と激しい戦いを繰り広げるも、劣勢に立たされてしまう。そこで彼らは態勢を立て直すため、一旦戦略的撤退をすることに。逃走手段として汽車を選ぶのだが、なんと第七師団の増援列車に乗り込んでしまう。

 そこで動き出したのが牛山。彼は素手で、しかも涼しい顔で兵士たちを次々と投げ飛ばし、さすがとしか言いようがない強さで敵を圧倒する。“ちぎっては投げちぎっては投げ”という言葉がぴったりの光景に、周りは思わずドン引きだった。

 その後牛山は、第七師団屈指の実力を誇る月島軍曹とも一戦交えることに。武器で刺されようが殴られようがびくともせず、「どうだ強いだろ?」と誇らしげに言う余裕さえ見せていた。手投げ弾を使用されても素手でキャッチし投げ返しており、その化け物じみた身体能力にはもはや笑うしかない。

 そこで月島は、手投げ弾を使った自爆作戦を決行。牛山は突っ込んできた月島をいともたやすく投げ飛ばすが、その拍子に彼の手から爆弾が落ちてしまう。しかも運の悪いことに、落ちた先はアシㇼパと白石のすぐそばだった。

 牛山は迷うことなくアシㇼパたちの盾となった。衝撃が落ち着いた後アシㇼパと白石が目にしたのは、片腕を吹き飛ばされるという大怪我を負った牛山。さすがの彼も爆弾の威力には勝てなかったようで、そのまま崩れ落ちていってしまう。

 死にゆく彼の脳裏によぎるのは、かつて家永カノに投げかけられた「あなたの完璧はいつだった?」という問いかけ。彼は薄く笑みを浮かべながら「いまだよ…いま」と答えると、そのまま息を引き取った。白石の「最後まで格好良いなんてずるいだろ」というセリフの通り、牛山のかっこよすぎる生き様と死に様は、多くの読者に感動を与えたことだろう。

 激しいアクションと心揺さぶる人間ドラマが魅力の『ゴールデンカムイ』。今回紹介した以外にもさまざまなキャラクターが懸命に生き、全身全霊をかけて戦い、そのなかの一部は散っていってしまった。数多くの命のきらめきのなかで、あなたの心に残っているのは誰だろうか。

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