■命の恩人・土方を守って散ってしまった、都丹庵士の美しい最期
続いては盲目の盗賊・都丹庵士の死亡シーン。彼は目が見えない代わりに聴覚や嗅覚が鋭く、音の反響や匂いで敵の居場所を把握することができる。暗闇や霧の中など、常人にとって視界が効かない状況での戦闘がとりわけ得意だ。
彼は、囚人時代の硫黄山での苦役によって視力を失ったという過去を持つ。それゆえ、囚人に苦役を強いた人間たちに復讐するために動いていた。しかし土方に命を救われた経験もあって、金塊争奪戦では土方陣営に加わることになる。
その後も都丹は土方に2度ピンチを助けられた。つまり彼にとって、土方は自分を3度も救ってくれた命の恩人だったのだ。彼はそのことをとても有難く思っており、だからこそ土方のためならすべてを懸ける覚悟でいた。
そんな都丹が命を落としたのは、五稜郭で繰り広げられた最終決戦でのこと。彼は激しい戦いの最中、第七師団の二階堂が土方を狙っていることに気づき、とっさにかばって銃弾を食らってしまう。その際の「どうせオマケの人生だ 少しでもあんたの寿命の足しになれば……」というセリフからは、彼の感謝と忠誠心がにじみ出ていた。
土方を先に行かせ戦い続けた都丹は、その途中でふと音が止んだことに気づく。彼はいつの間にか戦場とはほど遠い、真っ白で静かな世界にやってきていた。視力を失って以来、暗闇と喧騒の中で生き続けてきた彼は、最期にようやく光と静寂で満ちた場所にたどりつくことができたのだった。
土方にこれまでの恩を返し、満足げに散っていった都丹。その悲しいと同時に美しくもある最期には、思わず胸がアツくなってしまった。