■「筋肉の殉教者」は致死量のドーピングで作られた!?
最後に紹介するのは、原作・サンドロビッチ・ヤバ子氏、作画・だろめおん氏による格闘漫画『ケンガンアシュラ』。企業に雇われた闘技者たちが代理として「拳願仕合」で戦う物語だ。原作を担当しているサンドロビッチ・ヤバ子氏は、女子高校生の筋トレを描いた『ダンベル何キロ持てるかな?』も手がけている。
筋肉キャラの宝庫『ケンガンアシュラ』から今回選んだのが、東洋電力に所属するユリウス・ラインホルトだ。ユリウスは身長205センチ、体重210キロの巨体を誇るが、特筆すべきは文字通り彼が作り上げた筋肉であろう。「ドイツ医学の粋の極み」「科学が生んだ『最高の筋肉』を持つ男」つまり、ユリウスの筋肉はドーピングにより量と質が底上げされていたのだ。
だが、ユリウスに施されたドーピングは命がけのものであった。常人なら絶命に至るほどのドーンピング量と科学的トレーニングで肉体を作り上げ、彼自身も筋力向上のためスポーツ生理学やスポーツ医学、心理学、物理学などを修めている。まさにユリウスは「筋肉の殉教者」と称されるに相応しいモンスターなのだ。
人類史上最強の筋肉とそのスペックを最大限まで引き出すユリウスは、試合前のデモンストレーションとしてフルアクセルのF1マシンを鎖で引きずって見せた。少年漫画などでは安易な筋肉アップとして見下されるドーピングも、ユリウスにとっては覚悟ある選択かもしれない。
マッチョキャラクターは咬ませ犬のようなポジションで登場することもあるが、今回紹介した筋肉キャラは、いずれも自分たちの持つ筋肉の特性を生かし活躍している。「筋肉は全てを解決する」や「筋肉は裏切らない」などの言葉が流行したように、私たちの筋肉に対する考え方が変わってきたように思える。