■ヤクザの若頭・京次郎がたどった悲しすぎる運命

 次に紹介するのは、コミックス21、22巻に収録された第184訓から186訓に描かれたエピソード。ヤクザの若頭・中村京次郎にスポットを当てた物語である。

 ある日万事屋の3人はヤクザの組長・下愚蔵から、引きこもりの息子・鬱蔵を外に連れ出してほしいという依頼を受ける。鬱蔵は昔から心優しく大人しい子どもで、極道の世界を嫌っていたため父とうまくいっていなかった。そのせいで蔵に引きこもり、なんと5年も外に出てきていないという。病にかかり死期が迫った下愚蔵は、最期に息子に会いたいと願い、銀時たちを頼ったのだ。

 やがて銀時が蔵の扉をこじ開けたことで、鬱蔵は5年前に亡くなっており、組の若頭である京次郎がその事実を隠ぺいしていたことが明らかになる。銀時に「鬱蔵を殺ったのはてめーか」と問いつめられた京次郎はそのことを否定しなかったが、その裏にはあまりにも悲しい真実が隠されていた。

 かつて身寄りのない悪童だった京次郎は、下愚蔵に拾われ、実の息子同然に育てられる。鬱蔵もそんな彼を兄のように慕い、京次郎は下愚蔵親子を守ることを決めていた。

 しかし月日が経ち、組の跡目の話が浮上してくると下愚蔵と鬱蔵が衝突。いつしか鬱蔵は父には優秀な京次郎さえいればいいのだと思いつめ、蔵の中で自ら命を絶つという悲劇が起こる。

 鬱蔵の遺体を目撃した京次郎は、諍いの末に息子が命を絶ったと知れば下愚蔵が大きなショックを受けることを危惧。病で先の長くない下愚蔵に我が子の死を悟られないように、蔵に引きこもっているとウソをついたのである。その努力が報われたと言っていいのか、下愚蔵は息子が自死した事実を知らないまま病死する。

 そして京次郎は次期組長を襲名することになるが、ハナから京次郎に組を任せる気がない組織の手の者が襲撃。京次郎のウソを見抜いていた銀時の助力を得て戦うものの、京次郎は致命傷を負ってしまう。

 血まみれの京次郎に肩を貸し、ボロボロの彼を下愚蔵の墓前へと連れて行く銀時。息も絶え絶えだった京次郎は、下愚蔵の眠る墓石にもたれかかるように最期を迎える。その顔には、この上なく穏やかなほほ笑みが浮かんでいた。

『銀魂』としては比較的珍しい、救われない展開が延々と続いたこのエピソード。たとえ汚名を着ても大事なものを守ろうとした京次郎の強く悲しい生きざまに、思わず涙がこぼれる。

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