■夢を叶えて週刊少年誌へ! 漫画愛あふれる「大高忍」のすごさ
大高忍氏は2004年に青年誌『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)にて、『すもももももも ~地上最強のヨメ~』で連載デビューを果たした女性作家である。
少年誌で連載することが昔からの夢だったそうで、編集者の誘いもあり『週刊少年サンデー』(小学館)に移籍。アラビアンな世界観が魅力のファンタジー大作『マギ』を生み出し、それまで以上に名を知られるようになった。本作は「第59回小学館漫画賞 少年向け部門」を受賞している。
さらにその後『週刊少年マガジン』(講談社)のほうでも戦国時代をモチーフにしたバトル漫画『オリエント』を連載。ちなみに大高氏のこれまでの連載作品はすべてアニメ化されており、彼女の描く作品はいずれも高い支持を集めたことが分かる。
とにかく漫画を描くことが好きなようで、編集者から趣味を聞かれた際に「漫画以外に何がある?」と回答したことが『少年サンデー』の公式サイトにて明かされている。
壮大かつ繊細なストーリー、細部に至るまでの描きこみ具合、個性あふれる愛すべきキャラクターたちから、大高氏の漫画に対する愛情が「これでもか」と言わんばかりに伝わってくる。
■少女漫画から青年漫画まで話題! 独特の世界観が魅力の「羽海野チカ」
羽海野チカ氏は、美術学生の青春を描く『ハチミツとクローバー』でデビューした漫画家。本作は当初、少女漫画誌『CUTiE Comic』(宝島社)に掲載されていたが、同誌が休刊となったために連載終了。しかしこの作品を描き続けたいという想いが強く、自ら『YOUNG YOU』(集英社)に持ちこんで再連載。その後『YOUNG YOU』も休刊となり、移籍先の『コーラス』(集英社)にて2006年に完結。結果的にアニメ、実写映画、テレビドラマ化されるほどの人気作となった。
そして2007年からは青年漫画誌『ヤングアニマル』(白泉社)にて、ガラッとテイストが異なる将棋をテーマにした漫画『3月のライオン』を連載。青年漫画誌で描くのは初めてながら、心揺さぶるストーリーや白熱した対局シーンなどが高く評価され、「第18回手塚治虫文化賞 マンガ大賞」をはじめ、数々の賞を受賞している。アニメ化はもちろん、神木隆之介主演で実写映画化もされ、その原作再現度の高さも話題になった。
羽海野氏は長らくアナログ作画派だったが、人気アプリ『Fate/Grand Order』のキャラクターデザインを担当したことをきっかけにデジタル作画にも挑戦。過去に羽海野氏は「絵の雰囲気によってデジタルで描いたほうがいいイラストと、絵の具の方が素敵に仕上がるイラストが。どちらも使いこなせるようになりたいなぁ」と自身のSNSで語られていたが、それを実行に移したようだ。
これだけ成功をおさめながらも、さらに良い作品づくりのために新しい技術を取り入れようとする前向きな姿勢に頭が下がる思いだ。
今回紹介した荒川弘氏、大高忍氏、羽海野チカ氏は、作風も来歴もまったく異なる3名だが、いずれも少年誌や青年誌を牽引する人気漫画家である。まったく異なるテーマの代表作を複数生み出した彼女たちだけに、今後もさらなる活躍をみせてくれるに違いない。