■メルヘンな夢に秘められた恐ろしすぎる桜の行動
『Heaven's Feel』には“意味が分かると怖い”的な衝撃シーンも出てくる。第2章「lost butterfly」で描かれた、間桐桜が見るメルヘンチックな夢がそれだ。
夢の内容は以下の通り。お姫様のようなドレスを着て、可愛らしい世界の中を歩いている桜。途中に現れたぬいぐるみたちが行く手を阻むが、桜が軽くつつくとなんと飴玉が出てくる。これに大喜びした桜は、次々とぬいぐるみをつついてみせる。そして手に入れた飴玉を、幸せそうな表情で頬張るのだった。
……単体で見ると何ということもない、それどころか桜の可愛らしさが盛りこまれたシーンだが、その裏にはとんでもない真相が隠されている。実は桜は、このとき聖杯になりつつあるがゆえに大量の魔力を求めており、夜の街に繰り出して人を殺していた。ただし本人は眠っている夢遊病のような状態になっていたため、現実で起きていることがメルヘンな夢に変換されていたのである。
夢の中のぬいぐるみは現実では人間で、飴玉は肉片や血しぶき……と解釈し直すと、メルヘンなシーンが一瞬でとんでもないグロシーンへと変貌する。その激しすぎるギャップが、恐ろしくも見事である。いっさいの自覚なしに人間を殺して食らうという、彼女の恐ろしさが身に染みてゾクゾクさせられた場面だ。
容赦のない描写も見どころの1つである『Fate』シリーズ。もちろん刺激的な部分を抜きにしても魅力あふれる作品だが、衝撃シーンが一種のスパイスになっているともいえるだろう。他にもトラウマ級のシーンは数多く登場するので、ぜひ作品を見て、自分の目でたしかめてほしい。