■修行を通して弱さを強さに変えたボッジ
2021年にアニメ化され人気を集めた十日草輔氏による漫画『王様ランキング』の主人公であるボッジは、ボッス王国の第一王子。心やさしく頑張り屋の少年だ。しかし子ども用の剣すら持ちあげられないほど非力で、耳が聞こえず言葉を話せないせいで周りから馬鹿にされてしまっている。そんな彼だが、あるとき“人並みの力しかない奴を王様にまでした”というデスパーのもとを訪ね、彼の家に住み込みで修行する毎日を送ることに。
まずは武器選びから始まり、それから毎日ボッジは稽古場に閉じこもるようになる。彼がどんな武器を選んだのか、どんな修行をしているのかはほぼまったく描かれない。しかし彼が着々と力をつけていっていることだけは、何気ない描写から伝わってくるようになっている。あえて具体的なシーンを出さないことで、ボッジがどう変貌するのか気になるつくりになっているのだ。
結果的にボッジは、フェンシングで使う剣のような“針剣”を使って、相手の神経に刺激を与えることで気絶させるという剣技をものにしてみせた。これはボッジが観察力にすぐれていたうえ、その能力を伸ばすために努力したからこそ習得できたものである。使いこなすために力は必要ないため、ボッジの非力という欠点もカバーされている。また相手を殺さず気絶させて倒すという戦い方は、やさしい彼にぴったりだ。
非力な少年が非力なまま、自分の能力を伸ばして強くなるという展開には、思わずぐっとくるものがある。修行の描写はチラ見せ程度だが、結果を見た後読み返してみるとあれこれ想像を搔き立てられる。
あるときはひとりで、あるときは師匠に導かれて、あるときは仲間とともに強くなっていく少年漫画のキャラクターたち。彼らが強くなる過程を描く修行シーンは、ワクワクでいっぱいだ。他作品にも魅力的な修行シーンはたくさんあるので、ぜひ注目しながら作品を読んでみてほしい。