空知英秋氏の『銀魂』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて2003年から2018年まで連載されていた人情コメディ漫画。アニメ化はもちろん、小栗旬主演で実写映画化されたことでも話題を呼んだ。
『銀魂』は下ネタあり、各所から怒られそうなパロディありと、とにかくギリギリを攻めるギャグ要素が満載。かと思えば、ときにシリアスな物語が展開されるのも見どころのひとつで、まさに笑いあり涙ありの作品だ。
そんな本作のシリアスなシーンでは、思わずグッとくる名言が数多く登場する。今回はその中から、筆者がとくに印象的だと感じたものを紹介していこう。
■美しさと強さを兼ね備えた女性・妙の名言
万事屋メンバーの1人である志村新八の姉・妙は、一本芯が通った美しく強い女性だ。道場の一人娘という育ちもあってか、武道に優れており戦闘要員としても活躍する。ふだんはにこやかだが、怒ると鉄拳制裁を加えることも多く、周りからは頼りにされると同時に恐れられている。
そんな妙のセリフには、ハッとさせられるような強い力を持ったものが多い。中でも筆者の心を打ったのが、長編エピソード・竜宮篇のとあるシーンで放った彼女の言葉である。
このエピソードでは、乙姫という敵キャラが「地球上で自分だけが美しい存在でいる」という歪んだ欲望のため、特殊なガスを使ってあらゆる人間をしわくちゃの老人にしてしまおうとする。一連の騒動の中、妙は乙姫を怒らせたせいで殺されかけるが、決して怯まなかった。
それどころか妙は決然とした態度でこう言い切ってみせる。「私達は、しわだらけになったってあなたには負けない」「本当に美しいものが何かしっているから」と。
このセリフを言った妙の表情は凛々しく、彼女の気高さがよく伝わってくる。本当の美しさについて、あらためて考えさせられる味わい深い言葉だ。
■自分らしい生き様を愛する主人公・銀時の名言
主人公の坂田銀時は、ふだんはヘラヘラとだらしないが、実は揺るがない価値観や美意識をしっかり持っている侍だ。
彼の名言としてとくに有名なものに「美しく最後を飾りつける暇があるなら最後まで美しく生きようじゃねーか」というものがある。これは彼が仲間とともに剣をとった攘夷戦争で、追い詰められて自決しようとした戦友に向けたセリフだ。登場したのはコミックス1巻の第6訓とかなり初期だが、ファンの間で長く愛され続けている。
そんな彼の生き様を体現するセリフは他にもある。その1つが、紅蜘蛛篇で登場した名言だ。彼は仲間の月詠が強大な敵に捕らわれた際、脇目もふらず救出に向かった。そして、周りを巻きこむまいとなんでも背負いこんでいた彼女に対し、みっともない姿をさらしてでも助けを求めるように諭す。
彼はまっすぐな目で「自分(てめー)を捨てて潔く綺麗に死んでくなんてことより小汚くても自分らしく生きてく事の方がよっぽど上等だ」と伝えた。
地べたを這いずり泥まみれになろうとも、それでも生きていくことが尊いのだという銀時の想いが映し出されているように思える。数多くの出来事を乗り越え、泥臭く生き延びてきた彼の言葉だからこそ説得力がある。