■天才スナイパー・尾形の驚きの機転
ピンチを切り抜ける機転でいえば、コミックス26巻第255話の尾形百之助もあっぱれだった。ジャック・ザ・リッパーをめぐって各勢力が札幌ビール工場に集まる中、尾形は鶴見中尉の部下である宇佐美に出くわしてしまう。ふたりはどちらも第七師団の人間だが、尾形が途中で鶴見を裏切ったのに対し、宇佐美は「駒」となることもいとわないほど鶴見に心酔している。しかも尾形が宇佐美を「安い駒」呼ばわりした過去もあり、ふたりの関係は最悪の状態になっていた。
これまでの戦いで、尾形は右目を失う大怪我を負っていた。そもそも彼は狙撃兵で接近戦を得意としないのだから、格闘能力の高い宇佐美では相手が悪すぎる。案の定、ボコボコにされたあげく銃の弾をすべて抜かれ、大ピンチに追い込まれてしまう。
地面に這いつくばりながらも、やっとの思いで空っぽの銃のもとにたどりついた尾形。そんな彼を見て、宇佐美は弾を尾形の目の前に投げつけた。そして「取れよ その弾薬を装填するのが早いか…」「僕がお前の銃剣で心臓を一突きするのが早いか…」と勝負を持ちかける。
どう見ても尾形が不利でしかない状況。しかしなんと彼は、口の中に隠していた弾丸を舌で装填するという神業をやってのける。こうして尾形は宇佐美の腹部を撃ち抜き、状況を一瞬でひっくり返してみせた。
バトルシーンの描写に定評がある『ゴールデンカムイ』。一体どちらが勝つのかわからないスリリングな展開には、毎回ハラハラドキドキさせられた。物語がどのような結末を迎えるか、まだ未読はぜひ最後まで見届けてほしい。