■本体無視で完全なスタンドの独り歩き

 最後に紹介するのは、同じく5部から最終話で描かれた「前日譚」に登場したスタンド「ローリング・ストーンズ」。

 彫刻家・スコリッピが扱う、これまたかなり特殊な能力を持っているスタンダオだ。スコリッピは一般人で、スタンド能力を使って何かをしようとは考えていなかった。しかし、本人の意思とは関係なくスタンドの能力が勝手に独り歩きしてしまうのだ。

 スタンドの形状は黒い石で、「凶」という文字が刻まれている不吉な見た目。どんな能力なのか? それは周囲にいる人間の「近い未来の死」を感じることで発動し、その対象をずっと追いかけるというもの。石はターゲットとなる人間に触れることを目的としていて、対象が石に触れてしまうと、本来の死の形を待たずにそこで安楽死を迎える。

 本体であるはずのスコリッピはこのスタンドを止めることが出来ず、ただ見守るのみ。第5部ラストでは、ローリング・ストーンズに近い未来の死を予知されたブチャラティが、石に追い回されて逃げられない状況に追い込まれてしまった。

『ジョジョの奇妙な冒険』には攻撃方法がかっこよかったり、便利に活用できそうなものまで魅力的なスタンドが多いが、中にはまるで意味不明で、使用者本人にも不利なことをしてくるスタンドもいる。だがそうした不気味なスタンドにも惹かれてしまうもの。あらためて荒木氏の発想に驚かされるばかりだ。

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