『鋼の錬金術師』は荒川弘氏によるダークファンタジー漫画で、『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)で2001年から10年にかけて連載されていた作品。2022年には実写映画の最新作『鋼の錬金術師 完結編』(全2部作)が公開され、ファンの間で話題を集めている。
天才錬金術師のエドワード・エルリックとその弟アルフォンス・エルリックは、幼い頃に人体錬成という禁忌に手を出し、そのせいで兄は片腕と片脚を失い、弟は体全体を奪われて魂だけの存在となってしまう。2人は体を取り戻すために旅に出て、さまざまな出会いと別れを繰り返すことに……。
本作はそんなストーリーの面白さはもちろん、心揺さぶる名言が数多く登場することでも知られる。そこで今回は、作中に登場した「厳しくも心に刺さる名ゼリフ」を紹介していく。
※以下には、コミック『鋼の錬金術師』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、漫画およびアニメをまだご覧になっていない方、意図せぬネタバレが気になる方はご注意ください。
■どん底へ落とされた少女にぶつけた、厳しくも力強いエドの言葉
まずは原作第1巻収録の第2話に登場する名ゼリフから。エドとアルは賢者の石を探すため、アメストリス東部にある街・リオールにやってくる。そこでは「奇跡の業」を使うコーネロという名の教主が多大な影響力を持っていた。
そこでエルリック兄弟が出会った少女・ロゼも、コーネロを慕う信者の1人だ。彼女は恋人を亡くしており、「死者をよみがえらせる」というコーネロの約束を唯一の希望として生きていた。
しかしコーネロは不完全な「賢者の石」の力を使って用いる錬金術を「奇跡の業」と称していたインチキ教主だった。もちろん死者を蘇らせることなどできるはずもなく、彼が信者をダマして私利私欲のために利用しようとしていたことが、兄弟によって暴かれてしまう。
こうして、自分が信じてきたものが偽りだったと突きつけられたロゼは、大きなショックを受ける。彼女はエドたちに対し、涙ながらに「これからあたしは!」「何にすがって生きていけばいいのよ!!」と悲痛な叫びをぶつける。そんな彼女にエドはこう返した。
「そんな事自分で考えろ」「立って歩け 前へ進め あんたには立派な足がついてるじゃないか」
突き放すような物言いではあるが、何があろうと前向きに生きろという力強いメッセージが感じられるセリフだ。片腕、片脚を失いながらも前に進み続けてきたエドが言うからこそ、よけいに心に突き刺さる言葉だった。
結果としてロゼは立派に立ち直り、リオールで暴動が起こった後は復興のためボランティアをしている。その姿が描かれるのは第19巻でのこと。エドの言葉のおかげで再出発し、人のためにあろうとする彼女の姿を見ると、1巻の頃からの成長ぶりに思わず胸が熱くなる。