■ニセモノが臆病者に伝えたホンモノの“勇気”
最後に紹介するのは「ニセ勇者一行」の魔法使い“まぞっほ”だ。第1話「デルパ!イルイル!」ではゴメちゃんをさらい、デルムリン島のモンスターたちをひどい目に遭わせた悪者一味の一人として登場する。魔法の筒でダイにこらしめられはしたが、ロモスの宿屋で再会した時も懲りずに仲間たちとサギまがいなことをしていた。
そんな小悪党でしかないまぞっほだったが、クロコダインに怖じ気ついて逃げ出したポップへ熱い檄を飛ばす。「勇者とは勇気ある者ッ!!」「そして真の勇気とは打算なきものっ!!」と。これぞまさに作中でも1、2を争う名言だ。これらのセリフはまぞっほの師匠の言葉であり、同時に若き日の彼もまた「正義の魔法使い」を目指していたことが明らかになる。
さらにアニメ版では「ほら、僧侶のずるぼんが人間にはそれぞれ役割があると言っておったじゃろう。勇者になる者と、ワシらのようにその周りであこぎなことをやる者と」「あれは違うな……はじめから役割など決まっておらん」と語るまぞっほ。これはポップへの言葉であると同時に、まぞっほが自分自身に投げかけた後悔であり問いかけにも思える。事実、後にニセ勇者一行は改心(?)し、彼らなりに本物の勇者を目指すための旅を始めたからだ。しかして、その成果は……。
ポップにはアバンやマトリフと言った偉大な指導者がいるのだが、こと“勇気”に関してはまぞっほも一役かっていたのは間違いないだろう。
本作ではニセモノ勇者や元勇者など、さまざまな“勇者”が登場する。ダイは「勇者は一人だけっていうきまりがあるわけではないし」と他勇者の存在を受け入れていた。遊撃隊にとってチウが勇者であったように、私たちの中にも“勇者”は眠っているのかもしれない。