■わがまま息子が見せた誇り高き勇者の意地!?

 このように情けなかったり卑怯だったりするキャラが意外な勇気を見せるのが『ダイの大冒険』の胸熱展開のひとつ。次に紹介するのは「人呼んで…“北の勇者”!」ことノヴァ。リンガイア王国の将軍バウンスの一人息子で、氷系最強呪文を唱え、オリハルコンを切り裂く「闘気剣」の使い手だ。だが確かな才能とは裏腹に、ノヴァはいわゆる自己中な性格に育ってしまっていた。

 勇者への激しいライバル心を抱き、小さなダイをこれ見よがしに見下していたノヴァの高飛車な鼻はすぐにポキリと折られてしまう。ハドラー親衛隊に惨敗しダイたち勇者一行に救われたからだ。皮肉にもこの敗北をきっかけに態度を改めるノヴァの、さらなる成長をうながしたのが魔族ロン・ベルクとの出会いだった。

 最終決戦で“ミナカトール”の魔法陣を守る人間に対し、ザボエラは不死身の超魔ゾンビで襲いかかった。超魔ゾンビに疲弊する仲間たちの突破口として、ノヴァは自らの命を犠牲に“生命の剣”を使うと決心。死を賭して「真の勇者」を語るノヴァにロン・ベルクは種族を越えた感情を抱き、未完の究極剣「星皇剣」をふるって超魔ゾンビを打ち倒した。

 だが、それはまさに諸刃の双剣であり、ロン・ベルクの両腕はズタズタになってしまう。そうなることを分かっていながら自滅したロン・ベルクに報いるため、ノヴァは自分の手を使って欲しい、そして星皇剣は自分がきっと完成させてみせると誓うのだ。「…あなたは…強いだけじゃない…!!尊敬に値する人です!」。この新たな師弟関係が誕生したエピソードも同作屈指の感動シーンのひとつだ。

「勇者が弱いものを救うのは……あたり…ま…え」「真の勇者とは自らよりもむしろ……みんなに勇気を湧きおこさせてくれる者なんだ」など、人一番勇者にこだわってきたノヴァだからこそ響く名セリフは多い。『DRAGONQUEST-ダイの大冒険-』の根底に流れる「勇者とはなにか?」という疑問の答えがノヴァの成長に隠れているのかもしれない

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