■好きな人を目で追ってしまう
『スラムダンク』名物とも言える恋愛模様が、「桜木花道→赤木晴子→流川楓」という片思いの関係だろう。花道は晴子に好意を寄せ続けるのだが、その想いは悲しいほど伝わらず、晴子の気持ちはつねに流川に一直線……。
その晴子は憧れの流川に対し、ときには目をハートにさせて見守る姿にキュンとする反面、花道が気の毒に思えてくる場面も。インターハイ予選の強豪・翔陽戦では、花道は拳を突き上げる“勝利のポーズ”で「見ててくださいハルコさん!!」と思いきりアピールするが、恋する乙女の“ハルコビジョン”は花道の横を歩く流川しか見えてなかったり……。まさに大黒摩季によるアニメエンディング主題歌『あなただけ見つめてる』の状態だ。
好きな人を目で追ってしまう現象は“恋する乙女あるある”とはいえ、晴子の場合はあからさますぎてバレバレ。とはいえバスケと寝ること以外に興味のない流川はまるで気づいていないので、案外ちょうどいいのかも!?
■桜木花道を見出した「女の勘」
天然でおっちょこちょいな一面もある晴子だが、花道と出会ったときにすかさず「バスケットは…お好きですか?」と声をかけた。そして花道の驚異的な身体能力を目の当たりにした晴子は、バスケ部主将の兄・赤木剛憲に「初心者だけど…いつかバスケ部の…救世主になれる人かも知れないよ…お兄ちゃん!!」と激推しするのだ。
この晴子の先見の明は、あだち充氏の名作『タッチ』に出てくるマネージャーの西尾佐知子をほうふつとさせる。注目されていた双子の弟・和也ではなく、兄・達也の潜在能力をいち早く見抜き、野球部入りを熱心に誘っていた人物だ。
最終的に兄・剛憲に「晴子…お前が見つけてきた変な男は湘北に必要な男になったぞ…」とまで言わせた晴子は、佐知子ばりに「女の勘」が働く人物に思える。
それともう1つ。不良少年だった花道は“相当なワル”として名が知れ渡っていた。それを知らなかったとはいえ、赤髪で大柄の一見怖そうな花道に対し、晴子は色眼鏡をかけずにフレンドリーに接していた。
友だちから「よくあんなコワソーな人達と話ができるわね」と言われた際も、晴子は「私があんなに気がねなく話せた人なんて初めてなんだから」と語っている。もしかすると晴子は、直感的に花道の純粋でまっすぐな部分を感じ取っていたのかもしれない。
明るく前向きで可愛く、どんなときも全力で自分を褒めてくれる晴子のような存在がいたら、多くの男性がひかれることだろう。とはいえ漫画の中では、最初から最後まで「桜木花道→赤木晴子→流川楓」という片思いの関係は崩れず。恋の行方があいまいだったからこそ、いまだにいろいろと想像する余地があるのだろう。