■セーラーマーズのセリフに涙…

 最後はセーラーマーズこと、火野レイについて。彼女は原作漫画ではもともと冷静なお嬢様キャラだったが、アニメ化にあたってもっとも大きく性格の変更がなされたキャラクター。アニメでは怒りっぽくミーハーで、よくうさぎを叱りつけているシーンが印象的だ。

 巫女としての一面も持つ彼女だが、アニメでたびたびレイとの恋愛フラグを匂わせる、長い前髪が特徴の頼りない青年・熊田雄一郎はアニメオリジナルのキャラクター。彼はレイに一目ボレして神社に転がり込むほどに好意を見せていて、レイのほうもそんな彼に対して嫌いではないという態度を取っていた。

 そんなレイをはじめ、セーラー戦士たちはアニメの最後で悲劇を迎える。多くの少女たちにトラウマと絶望を与えたこの展開は今でもファンの間で語り継がれているが、レイの最後のセリフは多感な時期の少女らしい繊細な心情をうまく表していた。

 いよいよダーク・キングダムの本拠地である北極点Dポイントに乗り込むという直前に、レイはうさぎから雄一郎とキスしたか聞かれ「もしものことがあったら……」と心配されていたが「もしものことなんてないわよ!」と怒っていた。

 しかしDDガールズとの戦いで次々と仲間たちが倒れ、マーズもセーラームーンを守りながら敵に立ち向かうこととなる。最後には敵と相討ちになり、ボロボロの身体で「やっぱりうさぎの言う通り、雄一郎にキスしとけばよかったね」とつぶやく。今でも涙なしでは語れない名シーンだ。

 また、アニメでは男性に対してミーハーな面も描かれたレイだが、原作ではむしろ男嫌いという描写もあった。原作漫画の特別編「カサブランカ・メモリー」ではレイの最初で最後の恋愛について触れられており、それは政治家である父親との確執と、その秘書で思い人でもある男性にフラれた経緯が描かれる。

 過去の失恋経験から「もしもあたしが恋をしたら、きっとその人の全てを手に入れたくなって、全てをあたしだけのものにして、その人をダメにしてしまうかもしれない」「だから、恋なんてしない」と決意したレイ。うさぎを守るという使命ももちろんあるが、まだ中学生である彼女が男性と恋愛をしないと決めている理由には、なんとも心が締め付けられる思いだ。

 レイの恋愛観はアニメ・漫画で全く違うものだが、どちらも選べないほどに魅力的だ。

 アニメと漫画とではこんなに違う少女たちの恋愛模様、このほかにもアニメ化にあたって多くの設定変更があるので、今一度見返してみると、当時とは違う新たな楽しみ方ができるかもしれない。

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