2022年に30周年を迎えた、平成初期に社会現象になったアニメ『美少女戦士セーラームーン』。その華やかな世界観は今も多くの人をトリコにしている。
『なかよし』で連載された武内直子氏による原作漫画と、1992年から放送されたアニメとではいくつか設定に違いが見られる。アニメが子ども向け作品であったことや、当時の時代的な流れでアニメ化の際にこのようなキャラクターおよび作品の世界観の変更がされることは珍しいことではなかったが、中には物語の根底を揺るがすような大胆な設定の変更もあった。
今回は、作中に登場する少女たちの「恋愛模様」という観点に焦点を当てて、その違いを紐解いていきたい。
■ネフライトとなるちゃんの涙なしでは見られない恋愛はアニメオリジナル
まずはファンの間でも高い人気を誇る、ダーク・キングダムの四天王の1人であるネフライトと、主人公の月野うさぎの親友である大阪なるとの恋愛関係について。
アニメでは、第23話・第24話でこの2人がお互いを意識しひかれ合う様子が描かれた。ネフライトはそれまでなるちゃんを利用して銀水晶のありかを探し出そうと彼女に近づいていたが、その過程でなるちゃんを妖魔から助けてしまい自身に芽生えた感情にとまどう。そしてついには、ネフライトは妖魔の攻撃から彼女をかばって致命傷を負い……。
敵幹部と主人公の親友という立場の違う2人の恋愛。そしてついぞかなうことのなかった悲恋はせつないラストを迎え、無印の中でも第24話は特に人気の高いエピソードとなった。
しかし実はこの2人が思いあう設定はアニメオリジナルのもの。原作漫画では、ネフライトはセーラージュピターとの戦闘の末倒されている(アニメではこのころジュピターは未登場)。
しかも、原作漫画では四天王とセーラー戦士たちはそれぞれ前世の恋仲であるという設定がほのめかされており、ネフライトの相手はセーラージュピターだった。両者はなんとも因果を感じる関係性となっていたのだ。