■原作担当者の次作にも注目

 そしてもう一人、筆者が注目しているのは、『約束のネバーランド』の原作担当である白井カイウ氏の次回作。『約束のネバーランド』は孤児院で育てられた子どもたちが、実は自分たちが鬼の食料となるために飼育されていたと知り施設から脱走、救いを求めて過酷な運命に争う物語である。『ジャンプ』の王道よりもかなりダークな世界観を構築した白井氏には、次作でも面白い物語を連載してくれることをつい期待してしまう。

 これまで『ジャンプ』で2作以上のヒットを生み出した漫画原作者は少なくない。例えば、稲垣理一郎氏は2002年から2009年までアメリカンフットボールをテーマにしたスポーツ漫画『アイシールド21』の原作を務め、『Dr.STONE』では人類全員が石化した3700年後の世界で、石化から目覚めた人たちがイチから文明を再度作り上げるという壮大な物語を生み出した。2作は全く似ても似つかない世界観だ。

 また『DEATH NOTE』(2003年〜2006年)、『バクマン。』(2008年〜2012年)がともに大ヒットし多くのメディアミックスを果たした原作者の大場つぐみ氏も、殺人ノートをキーアイテムに繰り広げられるサスペンスな心理戦と、漫画家の裏側をリアルに描いた作品というように、全く別のジャンルに挑戦し見事に結果を残している。

 白井氏にもぜひ、『約ネバ』とは全く異なる世界を見せてほしい。これまで白井氏は読み切り漫画の原作として、臓器移植を受けた少年の記憶を描いたサスペンス『アシュリー=ゲートの行方』(作画:Rickey氏)や、『約ネバ』コンビとなる出水ぽすか氏作画の、ひきこもりの青年とAIの交流を描いた『ポピィの願い』、『約ネバ』連載後に『ジャンプ』に掲載された、少し変わった容貌の心霊写真専門のカメラマンを主人公とした『心霊写真師 鴻野三郎』(作画:出水ぽすか氏)など多彩な作品を生み出している。

『約ネバ』は11歳の少女が主人公だったので、高校生くらいの少年が主人公の能力バトルなども見てみたい。あるいは全くの方向転換でラブコメなんていうのもアリかもしれない。いずれにせよ、かなり細かく比類ない世界観設定で読者をワクワクさせてくれることだろう。

 一度のヒットを生み出すだけでもすごいのに、二度目三度目ともなると、もはやそのすごさは神の領域。ヒット作家たちの頭の中が見てみたい!

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