もはや国民的とも言える冨樫義博氏の大人気漫画『HUNTER×HUNTER(ハンター×ハンター)』。2018年11月26日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)の52号から休載中だが、作中に出てくる架空の盤上競技・軍儀が実際に商品化されたり、除念師アベンガネの創り出した念獣がバッグになったりと、今もなお話題には事欠かない。
読者が圧倒されるほど緻密に練られた設定や世界観も魅力だが、やはり衝撃的なストーリー展開こそ『ハンター×ハンター』の醍醐味。予想もしなかったキャラが壮絶な死を遂げ、強烈な印象を与えてくれるシーンも少なくない。そこで今回は、個人的に脳裏から離れないくらいの衝撃を受けた3名のキャラの最期のシーンを紹介したい。
※下記内容には『ハンター×ハンター』のネタバレが含まれています。コミック未読の方はご注意ください。
■仲間に旅団と団長を託して散ったパクノダの切ない最期
まずは、仲間想いの優しい性格のせいで命を落とたキャラクター・パクノダから。彼女は盗みや殺しを主な活動としている危険極まりない集団「幻影旅団」のメンバー。ワンレングスのボブヘア、長身かつナイスバディで、胸元が大きく開いたスーツ姿の女性である。
人や物体から記憶を読み取ったり、能力で引き出した記憶を弾にこめて撃った相手に共有できたりする、非常にレアな能力の持ち主。しかし、結果的にはこの能力を使ったことで死に至ることに。
幻影旅団の壊滅を目論むクラピカは、旅団の団長クロロ=ルシルフルを捕らえることに成功。しかし、クラピカの友人のゴンとキルアが旅団に捕まってしまい、お互いの人質解放を行うことになる。
その条件としてクラピカが提案したのは、団長クロロに念能力の使用禁止と、今後旅団員とは一切の接触を絶つこと。パクノダには人質の解放と、クラピカに関する情報を一切漏らさないことを告げる。その条件を飲んだ2人は、クラピカの念能力によって約束を破ったら心臓を鎖に握りつぶされるという誓約を交わした。
アジトに戻ったパクノダから人質解放の話を聞かされた旅団員たちは、条件を飲んで団長の命を救うべきか、それとも団長を見殺しにして犯人(クラピカ)を倒すべきかで意見が割れる。
結局、幻影旅団はゴンとキルアの解放を選択したが、アジトに戻ってきたのはパクノダのみ。クロロは今後旅団員との一切の接触を絶つことが解放の条件になっていたのだから、それも当然である。
それを知らない旅団員から説明を求められたパクノダは「信じて受けとめてくれる?」のセリフとともに、旅団設立時のメンバー6名に向けて銃を放つ。もちろんそれは攻撃の意思ではなく、パクノダの記憶や想いをメンバーに伝える念能力の発動だった。
この行為はクラピカと交わした誓約に反するため、鎖がパクノダの心臓を握りつぶし、彼女はその場で息絶える。
幻影旅団には、生かすべきは個人ではなく旅団という掟があり、敵に捕らえられた団長は切り捨てるのが当然の流れ。それでもパクノダは独断でクラピカと交渉し、掟よりも団長の命を救うことを優先したのである。
団長のクロロと幻影旅団のどちらも大切にしていたパクノダは、最後は自らの命を失うことを覚悟した上で、信頼できる旅団設立時のメンバーに自分の記憶と想いを託したのである。
彼女は死の間際に「お願い、私で終わりに…」という言葉を残す。これはおそらく幻影旅団の仲間に向けた、切なすぎる最後のメッセージだった。
パクノダは、路地裏の猫に「にゃー」と声をかけるなど、人間味あふれる性格。珍しい能力を持っていたのもあるのが、ここで失うのはとても惜しいキャラクターだと感じた。