『ろくでなしBLUES』に『今日から俺は!!』最強生徒とのケンカに恋愛エピソードも…ヤンキー漫画の「修学旅行編」が熱いワケの画像
画像は「中野」が初登場となった『今日から俺は!!』第8巻(小学館)

 他校とのケンカやバイクでの疾走を描き少年読者を魅了してきたヤンキー漫画たち。荒々しい内容の一方で、学生を主人公としていることから青春エピソードも数多く、他の学園漫画同様に“修学旅行”に出かける姿を描いた特別編もまた魅力的だった。

 旅先での強豪校とのケンカに最強キャラの登場、そしてヒロインとの恋。ヤンキー漫画の修学旅行編は地元のストーリーではできないことが描かれるため、印象に残っているという読者も多いのではないだろうか。

 そこで今回は、90年代のヤンキー漫画として大ヒットを記録した『ろくでなしBLUES』と『今日から俺は!!』の名作2本から、修学旅行のエピソードを振り返りたい。

■太尊の実家事情が明らかになった大阪旅行

週刊少年ジャンプ』で連載された森田まさのり氏によるヤンキー漫画『ろくでなしBLUES』。

 主人公・前田太尊が通う帝拳高校は、コミックス第8巻で関西へ修学旅行に向かう。実は太尊の実家は大阪にある由緒正しい寺で、太尊はその寺を継ぎたくないがために兄の前田富士男とともに東京に出てきていたのだった。そんなある日、父親が危篤という連絡が入った。報せが本当か怪しみながらも太尊は、実家に顔を出すためにしぶしぶ修学旅行に参加するのだった。

『ろくでなしBLUES』の修学旅行編は、かなり内容が濃い。太尊の家族や中学時代のライバルの登場、かつての恋人とのエピソードなど、本来なら回想シーンでやってもおかしくない内容が丁寧に描かれている。

 特に強烈だったのは太尊のライバル・辰吉保栄の登場だろう。実在のボクサーの名前をモチーフとしたキャラが登場する同作において「辰吉丈一郎」と「薬師寺保栄」という世紀の一戦を交えた2人の名前が使われたこの人物。辰吉はその名前どおり、大阪極東高校の番長を張るテコンドー使いの最強キャラで、太尊の弟・前田用高をさらって中学時代の因縁の落とし前をつけようとしていた。

「やり返すと用高に復讐の矛先が向くかもしれない」と考えた太尊は、辰吉にいいようにやられてしまう。その姿を見て、用高が「自分でケリをつけるから、遠慮するな」と太尊を奮い立たせる姿は涙を誘った。

 しかし、その喧嘩は前田文尊の登場で決着がつく。文尊は太尊の父であり、辰吉が通う極東高校の初代番長だった。寺の住職でありながら化け物のように強い文尊は、キャラクターが強烈で、笑いすら生まれた記憶がある。

 最強の敵の登場に加え、最強のオヤジの活躍。それだけでもお腹いっぱいなうえに、『ろくでなし』で欠かせない恋愛要素にも進展があり、太尊の元カノ・春香や太尊の親友・浅川龍太郎、メインヒロインの七瀬千秋との複雑な恋愛模様も描かれている。

 さまざまな思惑が絡み合い、人間関係に影響を与えるが、最終的に太尊が初めて千秋に想いを打ち明けることとなった。喧嘩ばかりではない青春の一コマは甘酸っぱく、感動させられるシーンだ。

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