■最強の極道・花山薫の素朴な質問にほっこり

 最後に紹介するのも『刃牙道』に登場した1シーンから。退屈な日常に飽いていた花山薫は、“地上最強の生物”として恐れられる範馬勇次郎と戦いたいと直訴。地下闘技場の支配人である徳川光成は、その花山の申し出を受けて勇次郎を東京に招聘します。

 こうして花山と勇次郎は夕暮れの繁華街で対面するのですが、しばらく二人で言葉を交わしながら歩くことに。勇次郎は、刃牙との親子喧嘩をきっかけに世界中に顔が知れ渡り、なんと幼い子どもからサインを求められたという衝撃のエピソードを話し出します。

 これに驚いた花山は「書いたンすか」と反応。その言葉にかぶせるように勇次郎は「聞くなッッ」と返しており、何らかの対応をとったことは明白でした。

 花山組・二代目組長の花山薫が、まるで勇次郎の舎弟のような軽い口調で興味津々に質問するのが絶妙に面白く、戦闘開始前の会話とは思えないほどほっこりさせられた印象深いシーンです。

 ちなみにその直後、通行人にサインを求められた勇次郎は、指一本で色紙を十字に切り裂いて対応。それを見た花山が「お優しい……」と笑みを浮かべ、勇次郎が恥ずかしそうにする一幕も見ものでした。


 このように面白いと思った場面を挙げてみると、どのシーンにも範馬勇次郎が絡んでいるのはきっと偶然ではないはず。単なる格闘マンガとしてだけではない「刃牙シリーズ」の面白い部分やカジュアルな魅力が少しでも伝わったら幸いです。

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