■秦国の命運を握った美しき女傑の到来
最後に紹介するのは、原泰久氏の『キングダム』から。主人公・信のいる秦国は、趙・楚・魏・韓・燕の五国からなる合従軍に侵攻されます。ヒョウ公将軍が討ち取られ、李牧&ホウ煖を擁する趙の別働隊、約3万以上が秦の国都・咸陽に迫るという絶体絶命の状況で、最終防衛地となるサイの城に秦の大王・政が自ら出陣しました。
その城を守るのは偉大な将を失い、壊滅寸前だったヒョウ公軍の残存兵力のみ。秦の主力は別の戦場に釘づけになっており、政と信は絶望的な防衛戦に臨むことになります。サイに残っていた女・子ども・老人といった一般住民まで動員した秦に対し、李牧は大軍で包囲して波状攻撃を敢行しました。
連日、昼夜を問わず敵の猛攻が続き、ついに民兵たちは疲労の限界。何もない状態なのにバタバタと倒れていく始末。その上、秦の大王・政まで深手を負ってしまいます。
そして籠城開始から7日目、ついに西の城門が破られ、敵の騎馬隊がサイの街へとなだれ込みます。これでサイは陥落……秦の命運は尽きたかと思ったとき、“山の女王”楊端和が率いる大軍が突如現れたのです。
政は楊端和に援軍を打診していましたが、そのとき山の民は北方の敵と決戦の真っ最中。もし援軍要請が伝わり、応じてくれたとして、どんなに早くとも到着に8日はかかると目されていました。本来なら間に合うはずがなかったのです。
そんな強行軍で駆けつけた楊端和の「全軍血祭りだ」のかけ声を合図に、山の民の軍勢は斜面を駆け下り、趙の軍勢の背後を突きます。この頼もしすぎる来援が、サイの城だけでなく秦国の命運まで救いました。趙国三大天と呼ばれる稀代の軍略家・李牧の思惑を打ち砕いた、奇跡の逆転シーンは合従軍編でも屈指の名場面です。
絶体絶命のピンチを救うべく助っ人が颯爽と現れる場面は、何度読んでも鳥肌モノですね。このほかにもさまざまな作品に同様のシチュエーションがあるかと思いますが、あなたにとって一番記憶に残っている「助っ人登場のシーン」は何でしょうか?