■クールなだけじゃない『銀魂』土方のギャップ

 続いては、空知英秋氏による漫画『銀魂』。こちらはSF時代劇の体裁をとっており、新撰組をモチーフとした「真選組」や、土方歳三をモチーフとした「土方十四郎」など、みな歴史上人物の名前をもじった形で登場する。

『銀魂』の土方十四郎も、史実通りの厳格な性格で「鬼の副長」と恐れられており、アニメでは『ONE PIECE』ロロノア・ゾロなどの中井和哉が声優を担当。多くの創作物の土方がそうであるようにキリッとした眼差しがクールなイケメンキャラだが、彼の魅力はそれだけではない。

 作中では生粋のマヨラーで、白米の上にマヨネーズをこんもりと乗せた通称「土方スペシャル」を食べたり、妖刀「村麻紗」の呪いによって典型的なアキバ系オタクの「トッシー」という別人格が生まれたりと、『銀魂』の世界観の中では、彼もまた個性的な人物としての設定が付与されている。

 しかしこの土方もやるときはやる男。特にシリアスな展開の続いた将軍暗殺篇以降では、それまでとはまた異なった魅力がかいま見える。

■『刀剣乱舞』で女性ファンを魅了する土方

 2.5次元と呼ばれる、アニメや漫画を原作とした舞台にも、土方歳三は登場する。乙女ゲームが原作の『薄桜鬼』や、日本の名だたる名刀を擬人化したミュージカル『刀剣乱舞』シリーズが有名だが、今回は後者を紹介したい。

 ミュージカル『刀剣乱舞』に土方が登場するのは、2016年に公演された「幕末天狼傳」(2020年再演)と、2018年公演の「結びの響、始まりの音」。

 前者では主に新撰組の刀が登場し、新撰組の結成から池田屋事件などを経て近藤勇が処刑されるまでを独自の世界観で描く。後者では、近藤と沖田を失った土方が榎本武揚と出会い、自身の生きる意味を見つけ箱館に向かい、死亡するまでが描かれている。

 両作で土方を演じたのは俳優の高木トモユキ。『刀剣乱舞』の世界では、あくまで刀剣男士と呼ばれる日本刀が人の形となったキャラクターが主人公ではあるが、土方は作品の重要人物として描かれている。高木の演じる土方の鋭い眼光や仲間思いな性格、圧巻の殺陣と演技、そして彼の愛刀である和泉守兼定の心理描写は一見の価値ありだ。

 本作の土方の人間らしい葛藤や、近藤の首を手にして涙を流す様子には、こちらもつい感情移入してしまう。漫画やアニメとはまた違った「今、ここに生きている」土方を体感することができるだろう。

 このほかにも創作物の土方歳三はどれも魅力的な描かれ方をしているものばかり。彼のロマンを感じる生きざまを、作品を通して触れてみるのはいかがだろうか。

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