江戸時代の末期、激動の日本において時代の波に翻弄されながら、己の信念のために戦った男たち・新撰組。中でも「鬼の副長」と呼ばれた土方歳三はかなりの有名人で、現代のあらゆる創作物の中でもモチーフにされることが多い人気者だ。
土方は農民の子として生まれ、実家秘伝の「石田散薬」を行商しつつ、剣術道場で修行を積んだ。そして天然理心流の指導に来ていた、後に新撰組局長となる近藤勇と出会うこととなる。
新撰組発足後は京都の治安維持活動にあたったが、大政奉還による戊辰戦争で新政府軍の前に敗北。土方は北海道の箱館五稜郭の防衛戦で戦死する。
そんな土方の命日は5月11日。東京・日野にある土方歳三資料館では毎年命日に合わせて、土方の愛刀である和泉守兼定が期間限定で公開されている。
今回は土方の命日に合わせて、アニメ・漫画・舞台の世界で描かれた、魅力的な土方歳三について紹介したい。
■ミステリアスだった老“土方歳三”
まずは、2022年4月28日に完結したばかりの、野田サトル氏による漫画『ゴールデンカムイ』の土方歳三。同作はアイヌが秘蔵していた金塊をめぐって、そのヒントとなるイレズミの入った囚人たちを探し各勢力がぶつかり合うバトル漫画だ。
こちらの土方は箱館戦争で生き延びていたという設定で、網走監獄に収容された囚人として登場。自身と同じくイレズミの入った囚人たちの脱獄を主導し、金塊をめぐってのバトルに参加する。見た目は銀色の長髪に長いヒゲをたくわえた老人だが、眼光の鋭いただならぬ人物だ。
何が目的なのか分からない謎の多い人物であり、主人公の杉元佐一とアシ(リ)パが土方の思惑に振り回されることもしばしば。土方は剣の腕と銃の実力もかなりのもので油断ならないキャラクターとして描かれており、ともすると味方側になりがちな創作物の土方が、ここまでミステリアスな存在として描かれるのは珍しいことだった。