■かわいさが闇を余計に深くする『タコピー』に『まどマギ』

 かわいさと闇のチグハグさが人気の作品はほかにもある。最近では、漫画アプリ『少年ジャンプ+』で連載されていたタイザン5氏による漫画『タコピーの原罪』がそうだろう。

『タコピーの原罪』は、宇宙からきたタコピーが、ネグレクトやいじめを受けて日々を陰鬱に過ごす「しずかちゃん」をなんとか幸せにしようと奮闘する物語だ。タコピーの無垢ゆえの前向きで見当違いな解釈が、読んでいてツラく心にくる。これはタコピーが素直で悪気がない性格だからこそ、物語の悲惨な輪郭をより際立たせているのだろう。

 全く悪意のないタコピーとは違った角度ではあるが、闇を持つマスコットキャラクターといえばアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のキュゥべえも当てはまる。キュゥべえはかわいらしい白い猫のような見た目で魔法少女たちに変身を促すが、実は彼女たちから発せられるエネルギーを利用しようとしているだけであり、ファンから油断ならないと恐れられているキャラクターだ。

 また子どもに愛されるサンエックスのキャラクター「すみっコぐらし」も、見た目に反してそれぞれが心に傷やコンプレックスを抱いており、手放しでかわいいとは言いづらい。

 どの作品も、かわいさの裏にゾッとする闇を感じさせるものばかり。作中でニコニコ笑う彼らの姿を見て「かわいいは正義」だと言えるだろうか?

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