フジテレビ系の情報番組『めざましテレビ』内にて4月4日から毎週金曜日にアニメ放送されている『ちいかわ』。同作は「自分ツッコミくま」などで知られるイラストレーター・ナガノ氏のツイッターから生まれた、小さくてかわいい生き物たちの日常を描いた漫画作品が原作で、正式名称は『ちいかわ~なんか小さくてかわいいやつ~』だ。
『ちいかわ』のおもな登場人物は、ウルウルした瞳がかわいい控えめな性格のちいかわ、主要キャラの中で唯一流暢に言葉を操ることのできる素直で前向きな性格のハチワレ、天才肌だが奇行が目立つウサギなど、いずれもかわいいキャラたちばかり。
そのかわいらしさのおかげか、今や『ちいかわ』のツイッターのフォロワー数は100万人以上。待望のアニメ化やグッズ展開など世代を問わず愛される「ちいかわ」たちだが、そのどこかダークにも受け取れなくはない世界観の詳細はいまだに明示されていない。
同作はツイッターで1Pずつの漫画の形式で発表されており、彼らがどこかの世界で日々労働に勤しみ懸命に生きる姿や、ときにはおいしい食べ物を食べて幸せそうな表情をするシーンなどに我々はほっこりと癒される。
アニメでは今のところかわいらしいエピソードのみが放送されているが、原作漫画にはときおり「?」となるような場面も描かれており、少し読み解けば、その世界が「平和なかわいさ」で満たされているわけではないことに気づくはず。ちいかわたちは毎日のんびりと過ごしているわけではないようで、日払いの仕事(草むしりや討伐)に勤しみ、ときには夜勤をすることも。またこの世界にもインターネットは普及しているようだが、サイトの閲覧はネットカフェのような施設で、順番制かつ時間制のようだ。いずれも現実の世界に通ずるところがあり、それもなかなかハードな部類に入る。
日々の生活がハードなだけではなく、彼らはさまざまな危機に直面しがち。討伐対象に襲われたり、不思議なアイテムの力で見た目が変わったりと、油断できない日々が続く。
そんなちいかわたちが涙を流して困っているところや、それでも「なんとかなれッ」と立ち向かういじらしい姿が、読者の内に存在する複雑な庇護欲や嗜虐心をくすぐるのだろう。単に癒しという言葉では表現できない魅力が彼らにはあるのだ。
そんな「ちいかわ」の作品の世界観を象徴しているのが「モモンガ」というキャラ。彼は物語から推察するに、もともとは「小さくてかわいいものになって愛されたい」と願う「なんかでかくて強いやつ」だったようだ。モモンガは登場するたびに、かわいい自分をアピールして他者にかわいがられようとしている。それは彼がかつて、かわいくないがゆえに愛に飢えており、「小さくてかわいければ愛される」と信じてやまないためだろう。
小さくてかわいくて頑張るちいかわたちの人気の裏には、なんとも複雑な皮肉が込められているような気がする。ちいかわたちを見ていると「かわいいは正義」を疑わずにはいられなくなる。