■「男のくせに」苦い思い出から心を開いていく五条の成長模様

 今回のアニメが男性からの評価が高かったのは主人公・五条新菜の魅力もあるだろう。

 五条の夢は、ひな人形の人相を描く頭師(かしらし)になること。何よりもひな人形を愛していたが、幼い頃に女の子の友だちに「男の子のくせに、女の子の人形が好きなんて気持ち悪い」と否定されたことがトラウマで、心を閉ざしていた。

 それが原因で高校生になっても友だちを作らずにいたが、放課後の被服室で偶然、海夢と話をする。五条はひな人形の頭部を持ち込んでおり、それに話しかけるなど、なかなかやばいシーンを目撃されてしまうのだが、海夢はまったく否定せずに「めっちゃキレイじゃん」と感動するのだった。海夢は友だちとの会話の中で「人の好きなものをバカにすんなよ」とも言っており、人知れず五条の心に響いていた。

 これが五条にとっては大きな衝撃だった。こうして海夢のおかげで五条は、自身の夢を恥ずかしくないのだと認識し、心を開いていく。過去のトラウマを考えるとつらい面もあるが、ひな人形について真剣な五条をつい応援したくなってしまうのだ。

■ヒロイン喜多川海夢がかわいい!純情なリアクションに注目

「今期で萌えたアニメ第1位」に選ばれただけあり、何といってもヒロインである海夢がとにかくかわいい。海夢は雑誌の読モを務める美人ギャルで、クラスでも人気者。誰とでも仲良くなれる性格で、思ったことははっきりと口に出す強烈な面もある。

 五条に衣装を作ってもらうことになり、お互いの家を出入りするようになるが、ドギマギする五条と違って海夢はあっけらかんとしたもの。衣装を作るための採寸の場面でも堂々とした脱ぎっぷりだった。

 というように最初こそオクテな五条をからかうような描写が多かった海夢だが、裁縫だけでなく、料理までもそつなくこなす姿を見て、完全に五条に惚れていってしまう。浴衣姿に照れる五条を見て「ガチでテンアゲなんだけど~!」とモノローグで全力でドキドキしてみたり、そこからの海夢のリアクションがたまらなく魅力的なのだ。

 アニメは12話でとりあえずの完結を迎えたが原作はまだまだ連載中で、アニメの最後のシーンでは2期の存在を匂わせるようなセリフもあった。青春漫画としての要素と、恋愛漫画としての要素をあわせ持つ『その着せ替え人形は恋をする』。リアルタイムで見ていなかったという人は、ぜひ今からでもその魅力に触れてみてほしい。

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