冬アニメの最高傑作『その着せ替え人形は恋をする』今からでも見返したい注目ポイント3選の画像
アニメ『その着せ替え人形は恋をする』blu-ray vol.1より

 2018年から『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)で連載中の福田晋一氏による漫画『その着せ替え人形は恋をする』。2022年1月8日よりテレビアニメが開始となり、3月26放送の第12話で無事最終回を迎えた。

 同作はコスプレを通じた、ピュアな男子高校生・五条新菜(ごじょう わかな)とコスプレイヤーのギャル・喜多川海夢(きたがわ まりん)の成長と恋愛を描く物語。現在9巻まで刊行されている原作漫画は「電子コミック大賞」男性部門賞の他、数多くの漫画賞にノミネートされるほどの人気。アニメも評判がよく、dアニメストアが5100件以上の回答から集計した冬アニメのアンケート調査によると、「今期で萌えたアニメ」で第1位に。その他にも「今期で笑ったアニメ」で第2位に、「今期で感動したアニメ」で男性部門の第1位になるなど、高評価を集めた。

 話題作の多かった2022年冬アニメの中から、今回は『その着せ替え人形は恋をする』を振り返り、その魅力をおさらいしたい。

■コスプレの制作の過程がとにかく丁寧に描かれる

 家業であるひな人形制作の経験から裁縫が得意な五条が、海夢の代わりにコスプレ用の衣装を作ることになるところから物語が始まる同作。『着せ恋』は女性コスプレイヤーのかわいさを楽しむだけの作品ではない。コスプレイベント当日のエピソードなど、見映えの良いシーンはもちろんあったが、何よりもコスプレ制作の過程を丁寧に描いたクリエイター青春ものでもあった。これまで、イベントやSNSなどを通してコスプレイヤーを応援していた人も、同作を見て、その裏側にある制作過程の大変さを初めて知ったという人も多いのではないだろうか。

 たとえば、第3話「じゃ、付き合っちゃう?」では、五条と海夢が衣装の材料選びにショッピングに行くシーンが描かれる。人気者である海夢と学校で話すことで、周りの目が気になってしまう五条に対し、海夢が強引に誘うシーンだ。

 このショッピングも、コスプレ制作のこだわりが散りばめられた名シーンとなっていた。五条はキャラクターや作品の細部までこだわろうとする性格なので、ウィッグを選ぶ際にもキャラクター本来の髪色よりも、イメージカラーや見え方を重視して選んでいた。

 もともとコスプレをしたいと誘ったのは海夢だが、衣装についてはひな人形制作を毎日やっている五条のほうが詳しく熱心。五条も「喜多川さん、けっこう大ざっぱだよなぁ」と呆れながらも、役立っているのがうれしい様子だった。

 2人で初めて挑んだコスプレイベントは、結果として成功を収めた。しかし、最初はスケジュールの共有にミスがあり、五条はコスプレの衣装制作と学校のテスト勉強、入院している祖父の看病、家業の接客を同時におこなって心身ともに疲弊。一時は「(ひな人形制作は)向いてないのかな」「どうして俺はうまくできないんだろう」と自己嫌悪に陥ってしまう。

 しかしそんな思いを乗り越え、ギリギリで踏ん張って衣装を完成させた五条。自分の言葉が足りず、五条に勘違いさせたと気づいた海夢は泣きながらも完成した衣装に大喜び。コスプレイベントで一般客に写真撮影をお願いされ、2人の苦労は報われた。

 この制作過程の苦労があったからこそ、視聴者も2人の喜びに共感でき、一緒に感動することができた。

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