■王者・海南大付属への挑戦を前に生徒を鼓舞する

 次に振り返りたいのは、神奈川県予選の決勝リーグで、王者・海南大付属との試合前の一コマだ。試合前やタイムアウト中の監督からの激励は他チームでも描かれていたが、田岡も負けていない。

 この試合直前のミーティングで田岡は、選手たちに目をつぶらせ、今までの練習を思い出させた。前述の通り選手たちは鬼のような練習を思い出し、顔を青くし、汗をかいて吐き出しそうになっていた。

 陵南の練習量はどこよりも多く、どこよりも厳しいと豪語する田岡。そして「今年のチームが1番練習した」と選手たちをねぎらい、続けてこう言った。

「1番キツかったはずだ。よくがんばった」
「そろそろ陵南(うち)が王者(チャンピオン)になっていいころだ」

 このときの選手たちと田岡の表情は自信に満ちあふれており、両者の信頼関係がうかがえる。厳しい練習についてきてくれた選手と、選手を信じ切った監督。ここまで強固な信頼関係にあるチームは、ほかにないのではないだろうか。

■選手を褒め称え、自らの判断ミスを認める

 それでも陵南は海南大に敗れ、続いて全国大会出場の最後の枠をかけた湘北との試合でも敗れてしまう。試合後の記者インタビューで「敗因」を尋ねられた田岡は、次のように断言した。

「敗因はこの私! 陵南の選手たちは最高のプレイをした!」

 湘北が安西先生不在で迎えたこの試合。田岡はそれに加えて「ファウルトラブル」「選手層の薄さ」「素人・桜木」が湘北の不安要素だと分析していたが、ラスト2分で桜木が覚醒して連続でブロックを決め、三井とメンバーチェンジした木暮が貴重な3Pシュートを決めた。

 前述のインタビューは、2人の実力を見誤ったところからくるもので、田岡は桜木には「陵南の不安要素でもあるのか…!? あの男が」と慄き、木暮には「あいつも3年間がんばってきた男なんだ 侮ってはいけなかった」と称えた。

 漫画的に“名解説役”となったこの試合の田岡だが、自分のミスを潔く認めることはなかなか難しい。まして試合後にそれを公言するのは全国を目指すスポーツ部の監督としては本当に勇気がいる行為なのではないかと思う。キッチリと責任をとった田岡の姿に陵南バスケ部への並々ならぬ思いが伝わってくる。

 コミカルに描かれるシーンも多く、読者の人気も高い陵南・田岡監督。何かの指導をするのであれば田岡のように振る舞いたいものだ。

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