『スラムダンク』一番の名将は誰? 生徒にも愛された陵南・田岡茂一監督の指導法を振り返るの画像
画像はジャンプコミックスデラックス『SLAM DUNK 完全版』第16巻より(集英社)

 1993年から1996年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された井上雄彦氏による漫画『SLAM DUNK』。今年秋には井上氏自らが脚本・監督を手掛ける映画が公開予定で、再び世界中の注目を集めている同作。ズブのバスケ素人だった主人公・桜木花道が全国クラスにまで成長する姿を描いており、試合を通して数多くの名キャラが登場した。 

 そこで今回は、誰よりも熱く生徒たちの成長を見守った陵南高校・田岡茂一監督に注目。連載当時は流川や仙道のスゴ技に震えたり、桜木や三井の活躍に涙したが、大人になった今読み返すと田岡監督の理想的指導者ぶりに感動してしまう。本記事ではそんな田岡監督の名セリフをいくつか引用しながら、人物像を振り返ってみたい。

■期待の新人「ビッグ・ジュン」の苦悩を救った田岡

 湘北高校の安西、王者・海南大の高頭、全国常勝の山王工業・堂本などなど、同作の監督たちはいずれも「名将」と呼ぶにふさわしいキャラばかりだが、田岡は彼らに比べると人一倍感情豊かな人物。圧倒的にモノローグやひとり言が多く、また試合中に桜木にカンチョーされて悶絶したりと喜怒哀楽が激しいキャラだった。

 ところがその反面、選手には非常に厳しく、海南大戦の前には鬼のような練習量を思い出した生徒たちが吐きそうになるほど。だがそれでも決して疎まれてはおらず、「今でいえばオレが仙道 高頭が流川みたいなもんだ」とかつての輝かしい過去を語った場面で、生徒から「ウソだ!」「ウソだ!」と総ツッコミを受けていた。

 スパルタ的チームの監督は生徒から怖がられそうなものだが、むしろ距離が近く見えるこの場面。それは監督のキャラとコミュニケーション術によって和気あいあいとした雰囲気づくりに成功しているからで、ベンチの彦一までもが活躍をする個性豊かな陵南は田岡あってこそと言えるだろう。

 そんな田岡が監督に就任して初めて見つけたという逸材がキャプテンの魚住純だった。

 1年生にして199センチの魚住は「ビッグ・ジュン」というあだ名をもつ期待の新人だった。しかし、体力も技術も未熟な魚住は毎日のように田岡に怒鳴られ、練習から逃げ出してばかりいた。そして「ただでかいだけ」と先輩たちから陰口を叩かれていることも知り、練習についていけなくなった魚住は、ついに涙を流しながら田岡に退部を申告するのだった。

 3年になり、チームをまとめあげている魚住の姿からは想像もつかなかった回想シーンだったが、ここで彼に自信を与えていたのが田岡だった。田岡は魚住の悩みである「でかい」ことが何よりの才能だと、魚住を励ます。

「でかいだけ? 結構じゃないか」
「体力や技術を身につけさすことはできる…だが…お前をでかくすることはできない たとえオレがどんな名コーチでもな」
「立派な才能だ」

 そして魚住が3年生になったとき、陵南初の全国大会に出場するのが夢だと語る。魚住はいつもはただ厳しいだけだった田岡がそれほどまで自分に期待をかけていることを初めて知り驚くが、それを聞いてバスケ部を辞めることなく練習に励み、ついには神奈川No.1センターを争うほどの実力を手に入れた。

 田岡と魚住の信頼関係は作中でもひときわ丁寧に描かれており、屈指の感涙ポイントとなっている。生徒の悩みを聞いて「才能」として胸を張らせた、名言中の名言だろう。

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