■車のドアで指を大ケガさせる暴挙……

 政財界のトップが通いつめるほどの超高級店「碧寿司」の跡取り息子、紺屋碧悟(こうやへきご)。寿司職人として見事な腕を持ちながら、この男のやり口はとにかく汚すぎた。

 将太と碧悟が出会ったのは、新人寿司職人コンクールの3回戦「光りもの対決」の時。碧悟は、市場中の“光りもの”を買い占めて妨害し、さらに将太がやっとの思いで手に入れた“幻のサバ”を腐らせようと冷蔵庫の電源を切る暴挙に出る。

 それでも見事な寿司を披露した将太が完勝するのだが、そのとき碧悟は悪事がバレて寿司協会を追放された。

 その後、この二人が再び相見えることになった因縁の対決が、テレビ番組の「寿司職人vs日本料理の職人」という特番。しぶとい碧悟は日本料理の板前になっていた。

 その対決前夜、碧悟はなんと将太にケガを負わせるよう部下に指示。ハイヤーの運転手を装った部下は、将太が車を降りようとした瞬間にドアを閉じると、指を挟んだ将太は大ケガ。本番では左手が使えなくなってしまう。

 しかし、それでも諦めない将太は、片手だけで寿司を握る「小手返し一手」という技を一晩でマスター。なおかつ工夫を凝らしたサンマ寿司を披露した。

 その将太のひたむきな姿を見た碧悟の部下たちは、悪事に手を染めたことを反省。観客を買収したことや、市場でサンマを買い占めたこと、将太にケガを負わせたことをその場で暴露する。

 結果的に碧悟は日本料理界からも永久追放されるという、胸のすくような大逆転劇。碧悟のにくたらしい顔はもう二度と見たくないと思ったものだ。

 このように『将太の寿司』は料理マンガながら、半沢直樹ばりの「倍返し」が見られるのも魅力。痛快な勧善懲悪マンガを求めている人は、この機会に『将太の寿司』を読んでみることをおすすめしたい。

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