■長きにわたる陰湿な嫌がらせ

 東京の老舗「鳳寿司」の五代目・鳳征五郎に30年もの間嫌がらせをしていたのは、兄弟子の清川参治郎だ。

 鳳寿司の後継者争いに敗れた参治郎は、五代目に選ばれた後輩の征五郎を逆恨み。以前から征五郎と先代の一人娘がひそかに交際していたことを知ると、参治郎は「女がらみで後継者になった」と中傷し、姿を消した。

 その一年後、参治郎は自分の店を出したが、その開店披露の際に「人手が足りない」と征五郎を呼び出す。そこで征五郎には脂の乗っていない産卵直後のメスの魚の寿司ばかり握らせ、自分は良いネタで握った寿司を出し、来店客に食べ比べさせた。

 ネタの質が良い参治郎の寿司のほうがおいしいのは当然なのに、陰湿にも参治郎は「実力が足りないのに鳳寿司の一人娘をたらし込んで店を継いだ」などと吹聴。それを聞いた常連の文筆業者が、征五郎と鳳寿司を叩く記事を出すという悲劇が起こった。

 さらに時は流れ、数十年後。新人寿司職人コンクールで、参治郎の息子・流也と将太が対戦。鳳寿司代表の将太が勝利をおさめると、参治郎は実の息子に「てめえのような役立たずは死ね!」などの暴言を吐く。こんな親を持ってしまった息子があまりにも気の毒で、つい同情してしまう。

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