■誰もがあたりまえに思っていることにメスを入れる久能の金言

 また、ドラマ5話(原作コミックス4巻)では、小日向文世演じる元刑事の老人・牛田悟郎の「刑事としても負け、長い闘病の末、病気にも負けた」という言葉に、このような名言で返している。

「どうして“闘病”って言うんだろう。“闘う”と言うから勝ち負けがつく」「負けたから死ぬんですか。勝とうと思えば勝てたのに、努力が足りず負けたから死ぬんですか? そんなことない。僕ならそう言われたくない」「患者本人が、あなたが負けるんじゃない」。

 言葉の持つ意味を今一度考えさせられるこの言葉。普段は特に何も考えずに目の前に存在する単語を受け入れてしまいそうなものだが、彼の手にかかればそんな「あたりまえ」にもメスが入る。彼のこの言葉に救われた気持ちになった人も多いのではないだろうか。

 最後は、3月14日に放送されたばかりのドラマ10話(原作コミックス6巻)から。この話では深夜に営業していたある焼肉店で起こっていた事件を、久能整と門脇麦演じるライカが解決することとなる。

 焼肉屋の店主と思われていた男性が実は強盗犯だったと気づいた久能整は、「僕、サスペンスドラマとか見てるとよく不思議なシーンを見かけるんですが、刑事が犯人を見つけたらすごく遠くから声をかけるんですよ。だから当然逃げられちゃうんです。まあそうしないとお話にならないんだと思いますけど、どうして近づいてしっかり捕まえてから名前を呼ばないんだろうって」と言いながら、警察を連れて店に再訪。無事に事件を解決してみせた。

 ドラマを見ていて、この少々メタ的な発言にはクスッとしてしまった。常識(だと思われているもの)を疑う姿勢は、私たちも見習いたいものだ。

 彼の発言の数々を見ていると、久能整は目の前の物事ではなく、そのずっと奥にある本質を見ていることに気づかされる。情に流されない冷静さがあるからこそ信用できる、彼の当たり前を疑う発言の数々に、私たちも今一度、きちんと考えながら生きていこうという気持ちにさせられる。

 ドラマはいよいよ佳境に突入。最後まで久能整の「どうして」の着眼点に注目したい。

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