■「命」についてのセリフが多い宇髄
まずは、遊郭潜入後、善逸が行方不明になった際に宇髄の発したセリフから。妻を助けるということに躍起になっていた自分の落ち度によって後輩にあたる善逸に危害が及んでしまったと考えた宇髄は、炭治郎らに任務から降りるように言う。
食い下がる炭治郎に対し宇髄は「恥じるな 生きてる奴が勝ちなんだ 機会を見誤るんじゃない」とクールに説教した。
ふだんは、ともすれば誰より早く特攻しそうな見た目と言動の宇髄だが、柱としての冷静な判断力と、彼が他のどんなことよりも命を大切にしているということが感じ取れる、宇髄のギャップを初めて感じられるシーンだった。
次は宇髄が過去、3人の妻たちに言った「俺は派手にハッキリと命の順序を決めている まずお前ら三人 次に堅気の人間たち そして俺だ」という言葉。元くのいちだった妻たちは、命をかけることは最低限の努力という教えの中で生きてきたという。困惑する彼女らに対し宇髄は続ける。「一般人も守るが 派手にぶっちゃけると 俺 お前らのが大事 だから死ぬなよと」。
自らの命を大切にしてほしいがために、一般人よりも彼女たちの命を優先するとまで言いきる宇髄のこの言葉は、妻たちにとっては生まれて初めて言われるような意外な言葉だったに違いない。
「何があっても死なないでくれ」と懇願するのではなく、あくまでスマートに平然と伝えたことは、本人たちがプレッシャーを感じないようにという妻への思いやりがあってこそ。宇髄と彼女らの間に信頼関係があるからこそ響く言葉ではあるだろうが、我々も宇髄のように、人に物事を伝えるときには相手がどう感じるかというところまで想像して伝えるのが理想だろう。