現在「遊郭編」のテレビアニメが放送中となっている吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』。いまさら説明不要であろうが、物語は家族思いで心優しい少年・竈門炭治郎の家族が鬼によって皆殺しされてしまうところから始まる。炭治郎は唯一生き残ったが鬼になってしまった妹・禰豆子を人間に戻すために、想像を絶するような激しい戦いに身を投じるのだった。
炭治郎は圧倒的な強さを誇る鬼たちと戦う中で、何度もピンチに陥る。いよいよ打つ手なしかと思われたとき、絶体絶命の炭治郎の脳裏に浮かぶのはいつだって仲のいい家族たちの姿だった。今は亡き両親や弟妹はときに笑顔で、ときに炭治郎を鼓舞するように、彼の脳内に現れては彼の手助けをしてくれる。
今回は、劇中で炭治郎と妹の禰豆子が家族を思い出すシーンの中でも、特に号泣必至の感動シーンを3つ紹介しよう。
■神回「ヒノカミ」で描かれた両親の姿
まずは2019年にアニメ放送された「竈門炭治郎立志編」の中でも「神回」と話題となった19話「ヒノカミ」から。那田蜘蛛山で出会った初めての十二鬼月・累を前に、炭治郎はかつてない苦戦を強いられる。
炭治郎が走馬灯のように思い出したのは、父・炭十郎が竈門家に代々伝わる厄払いの神楽を踊る様子だった。このときの呼吸の使い方を応用し、炭治郎は「ヒノカミ神楽」を舞う。この戦闘シーンのヌルヌルと動く作画には感動した人も多いことだろう。
一方、累の糸に絡めとられた禰豆子の前に現れたのは、母・葵枝の幻想だった。母は禰豆子の頭の中で「お兄ちゃんを助けるの 今の禰豆子ならできる 頑張って」と語りかけ、このことをきっかけに禰豆子は自らの血を利用して鬼の細胞を燃やせる血鬼術「爆血」を使えるようになる。
中川奈美の歌う「竈門炭治郎のうた」をBGMにした、家族の回想シーンと戦闘が描かれるという特殊エンディングの演出がとられたこの回。今はなき家族の温かさに助けられる竈門兄弟の様子が初めてじっくり描かれたのも19話だった。