■当時の神谷道場は何かと出費が多くて大変だったはず

 しかし薫は、いったいどうやって無収入の剣心を養っていたのだろうか?

 剣心は戦いで怪我をしたり服がボロボロになったりしているため、治療費や被服費がそれなりにかかるはず。剣心に惚れていた高荷恵が、無償で薬を提供していたとしても、着物はさすがに新調していたはずだ。原作では剣心がツギハギ姿で登場したことは一度もない。

 そして、たまに「赤べこ」で食事をしている。さらに、何度も道場が破壊されたのにいつの間にか元に戻っている。この修繕費も相当かかっているはず。どれも小さい穴が開いたレベルではないため、素人が直すのは不可能だ。

 最終的には、結婚をして子どもまで作っている剣心と薫。子作りはまだしも、外食と道場の修復は金銭的に余裕がないとできない。余裕があるから、左之助も食事をたかりにきていたのだろう。となると薫には、相当の固定収入があったとしか考えられないのだ。

 しかし、神谷道場には弥彦しか門下生はいなかったため、月謝は得ていない。辻斬り事件が起きる前は10人ほどいたようだが、それでもかなり少ない。

 大身旗本や藩などがいた江戸時代であれば、『剣客商売』のように剣術道場の運営だけで生活できただろう。しかし、武士が担っていた剣術文化は明治初頭急激に衰退している。多くの町道場が寂れ、新選組ですら生活が苦しかったといわれる時代に神谷道場が剣心と弥彦を養っていけるはずがない。

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