■るーみっくのギャグなしシリアス作『人魚の森』
『うる星やつら』『めぞん一刻』、近年では『犬夜叉』『境界のRINNE』『MAO』など人気作を送り続けているヒットメーカー・高橋留美子氏の『人魚の森』も隠れた名作と呼べるものだろう。
『週刊少年サンデー』および『週刊少年サンデー増刊』で不定期に連載された本作。OVA、テレビアニメ化もされており氏のファンには知られた作品なのだが、1994年以降、最新話が途絶えていることもあり、他の作品に比べると一般的な知名度はそれほど高くないものになっている。
不老長寿の妙薬と伝えられる人魚の肉。それを食べて不老不死になってしまった湧太と真魚の旅が、永遠に生きることの苦悩と、2人を捕らえ、永遠を得ようとする人間たちの生への執着という背反の視点から描かれる。
この作品はどこまでもシリアスだ。氏の作品に多く見るギャグ要素は一切なく、ハッピーエンドで終わるエピソードは1つもない。人として死ぬことを求め、500年の時をさまようように生きてきた湧太の孤独は重く、ようやく見つけた人魚の里でも……。唯一の救いは同じ身の上の少女・真魚との出会いだけである。
終わりのない命を持つというのはどういうことなのか。切なさばかりがあふれる物語だが、人の一生を見るような静かな物語の運びはそれだけに深く胸に突き刺さるに違いない。未読の方にはぜひ読んでいただきたい作品だが、第1話からしてけっこうショッキングな結末なので、救いのない話は苦手という方は少々注意して手に取ってほしいところだ。