■登場人物もおもわずツッコんだ「すさまじい実験回」

 作者も認める実験回として忘れられないのが、コミックス第151巻に収録されたエピソード。そのタイトルは「ページめくりにくいと言わないで!の巻」です。

 この回は冒頭からページを横に使って描かれていて、読者はコミックスを90度左に傾けないと吹き出しの文字がちゃんと読めません。しかも作中にはページが少しずつ回転するような場面もあって、タイトルのとおりページがめくりにくい……というか純粋に読みにくいシーンが続出しました。

 困惑する読者を予想したかのように、作中で麗子が「今回の読みにくくない?」と指摘しており、両さんは読者の脳の活性化のために「わざと(本を)グルグル回させているんだ!」と作者の意図を代弁しています。

 しかもこの回の中には、絵がまったくない「セリフのみの漫画ページ」も登場。秋本治氏の独創的なアイデアがギッシリ詰まった、かなり特異なエピソードと言えるでしょう。

■まさかの壮大なドッキリ!?

 コミックスの第69巻「両さんメモリアル」というエピソードは、いろんな意味で読者を驚かせた伝説的な回です。

 このエピソードの終盤に両さんは、警察官を辞めて長い旅に出ることを宣言。その発言のあと、見開きのページに「長い間ご愛読ありがとうございました」「また会う日までさようなら」などと書かれ、手を上げて去る両さんの姿が描かれています。

 連載が終わったのかと思いきや、これは両さんがしかけた「ニセの最終回」というオチ。すぐに『新こちら葛飾区亀有公園前派出所』「新たなる旅立ちの巻」が始まりますが、両さんの悪ふざけに怒った大原部長が「ほかの漫画にいっちまえ!」と、両さんを『ドラゴンボール』の世界(ナメック星)に追いやるというラストもインパクトがありました。

 このほかにも、ふつうの漫画では考えられないような実験的なエピソードがたくさん描かれた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。コミックスを読み返すと、いまだに作者の秋本治氏の斬新かつ自由な発想に驚かされることが多々あります。

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