■初めて父親に会えた悟天
そしてベジータの死から10話後、其之四百七十七「孫悟空帰る」より。
悟空とチチには、悟飯と悟天という2人の子どもがいる。悟空と悟飯にはたくさんのエピソードがあるが、悟空と悟天のエピソードはあまり多くない。それもそのはずで、悟天が物心ついた頃には、悟空はセルとの戦いで死亡していたからだ。
しかし占いババの計らいで、悟空は1日だけこの世に生き返る。天下一武道会で力比べをする予定だったが、魔人ブウが復活して新たな戦いが巻き起こってしまった。時間に余裕のない悟空は、魔人ブウとの決着を次男である悟天とベジータの息子・トランクスに託す。
合体技・フュージョンを2人に授けた後、悟空はババに急かされて天国へと戻ろうとするのだが、そのときに悟天は悟空との別れが寂しくて泣き出してしまうのだ。たった数時間だけだが直接修行をしてもらい、悟天は父のことが大好きになったに違いない。あの世へ帰ろうとする悟空に、悟天が何かを言いたそうにもじもじとしていると、チチが「おめえ 父ちゃんにダッコしてほしいんだべ?」と気持ちを伝えてくれて、ようやく抱っこをしてもらう。高い高いをしてもらい悟空の胸に抱き抱えられると、悟天はそのまま感極まって泣き出してしまうのだった。
この頃の悟天はトランクスと同じくスーパーサイヤ人にもなれる天才児だが、悟空に抱えられた悟天は小さな子どもそのものでなんとも軽そう。父の胸で静かに泣くその姿がけなげで切なく、おそらくこのシーンで泣かされた読者は数多いはず。
この他にも、悟空と悟飯や、直接の親子ではないがピッコロと悟飯など、親子の名場面が多い同作。バトル本筋ではない、ほんの数コマだけで感動を与えるこうしたシーンがあるからこそ『ドラゴンボール』は不朽の名作になり得たのではないだろうか。