■木星船団に対する偏見も?

 ギレン総帥から認められていたシャリア・ブルとは対照的に、『機動戦士Zガンダム』の第11話でパプテマス・シロッコを受け入れたハリオの艦長テッド・アヤチ少佐は「なんであんな木星帰りの男を大佐は……」と発言しています。

 まるで「木星帰り」をバカにするような発言ですが、シロッコが上層部から認められていることへの嫉妬にも思えます。また、実はテレビアニメではこのときシロッコの階級は「大尉」、テッド・アヤチは「少佐」だったので、単純に格下のシロッコに偉そうなことを言われて腹を立てただけなのかも……。ちなみに劇場版『Zガンダム』ではシロッコの階級は「大佐」に変更されていました。

 それに木星船団は往復で4、5年はかかる上に過酷な任務内容だったので、その重要性が分からない人には「長期間、組織の中枢から離れる=左遷」のような偏見があっても不思議ではありません。

 実際のところは、木星の高重力下での任務をこなすには高い能力が必須。それに言うまでもなく木星で得られるヘリウム3は、宇宙世紀を生きる人類にとってかけがえのない資源です。

 必然的に、木星船団を率いる人材には優秀な人が選ばれたはず。それにシャリア・ブルのように、木星の厳しい環境下にいたからニュータイプとしての素養に目覚めたという分析(フラナガン機関による報告)もありました。

 また、パプテマス・シロッコがメッサーラで出撃する際には、ハリオに搭載されているモビルスーツを出撃させないよう忠告。これを聞いたテッド・アヤチ艦長が「木星近くで使うモビルスーツとは違うのは分かるが……」と反論したように、高重力の木星付近では、高い機動性を持ち合わせた強力な機体(つまり優秀なパイロットも)が必要であることが分かります。

 ほかにも漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』で木星帝国を作ったクラックス・ドゥガチ、アニメ『機動戦士Vガンダム』でザンスカール帝国を興したフォンセ・カガチらも「木星船団」出身だったことを考えると、人柄はともかく優秀な人材が木星に関与していると言わざるをえません。

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