1992年からアニメ放送された『美少女戦士セーラームーン』シリーズ。現在アラサーアラフォーとなった当時の少女たちだけでなく、2014年に再アニメ化した『美少女戦士セーラームーンCrystal』が放送されたことによって、現在の10代から20代の女性まで、さまざまな世代の女性から今もなお大きな支持を集めている名作だ。
『セーラームーン』がここまで大きな作品となった理由は枚挙にいとまがないが、なかでも魅力的なのはそのキャラクターたち。味方のセーラー戦士だけでなく、敵のキャラクターたちの背景も奥深い。シリーズの敵は、毎シリーズごとにボス的な立ち位置のキャラがおり、その下に幹部キャラ、さらにその下に1話ごとに倒されてしまうモブの敵キャラがいるという構図がお約束。この中で幹部以上のキャラクターたちに複雑な人間関係が描かれているのだ。
そこで今回は、『セーラームーン』シリーズに登場した、視聴者をとりこにした憎めない敵キャラたちを紹介したい。
■シリアス展開で衝撃を与えたネフライト
まずは『無印』と呼ばれる第1作に登場した幹部キャラの一人、ネフライト。第24話「なるちゃん号泣!ネフライト愛の死」では、うさぎの親友の「なるちゃん」が敵であるネフライトに恋をし、嘘ばかりついて悪だくみをしてきたネフライト本人もなるちゃんをつい妖魔から助けたりと、彼女に心を許してしまう。
今でもファンの間では涙なしでは見られない「神回」として語り継がれているこのエピソードの最後で、ネフライトは彼女をかばって致命傷を負う。最後はなるちゃんの腕の中で、今まで嘘をついていたことを彼女に謝りながら死んでしまうという切ないラブストーリーが描かれた。
敵ながら許されない恋に落ちた2人。全編にわたってギャグ要素のほとんどないしっとりとした展開はこれまでの『セーラームーン』史上初といってもいいだろう。またこの回ではセーラー戦士たちがほとんど登場しなかったのも印象的だ。オリジナル版でネフライトの声優を務めたのは『機動戦士ガンダム』のガルマ・ザビや『科学忍者隊ガッチャマン』の大鷲の健で知られる森功至。あまりに大人で美しいネフライトの死に衝撃を受けた子どもたちは多かったのではないだろうか。