■とてつもなく強大に感じた侵略者
『ドラゴンボール』にはいろんな強者が現れますが、「一番強いと感じたキャラクターは?」と質問されたら、私は迷わずに“ナッパ”と答えます。「ベジータでもフリーザでもブウでもなくナッパ?」と疑問に思われるかもしれませんが、ナッパが地球を代表する戦士たちと対峙したとき、リアルタイムで読んでいて正直一番絶望感を覚えたのです。
そこに至るまでの展開も、作中の緊迫感に拍車をかけます。前哨戦の栽培マンとの戦いで、あのヤムチャが死亡。主要キャラの亡きがらが無残に転がっているコマは今でこそネタ扱いされていますが、当時掲載された号の『ジャンプ』を読んだときは言葉を失いました。
いかにもザコっぽい栽培マンを相手に貴重な仲間を失い、216話から満を持して対峙したのがナッパです。巨漢のナッパが気合いを入れて構えただけで大地が震え、チャオズの「超能力が効かないっ!!!」という悲痛な声が危機感を募らせます。
そしてナッパがシンプルに殴りつけただけで、ガードした天津飯の左腕は吹っ飛び、チャオズの自爆攻撃もまったく通用せず。天津飯の最強の必殺技「気功砲」まであっさりと耐えられると、天津飯も力尽きます。
ナッパの前になすすべもなく、次々と主要キャラが死んでいく恐ろしい状況に、クリリンが「悟空――はやくきてくれ――っ!!」と絶叫しますが、まさに当時の読者の気持ちを代弁しているかのようでした。
もちろんナッパの後ろに控えていたベジータのほうがはるかに強いのですが、連載を読んでいて私が一番恐怖感、絶望感に震えたのは、ナッパが戦う一連のシーンだったのです。