■幸せな家庭を築いたはずが…!?
最後に紹介するヒロインは、ホワイトベースの操艦を担っていたミライ・ヤシマです。それほど目立つ容姿の女性ではありませんが、元婚約者のカムラン・ブルーム、陽気な伊達男スレッガー・ロウ、そして艦長のブライト・ノアから好意を抱かれ、一年戦争後にはブライトと結婚。実は初代ガンダムの中で一番の“モテ女子”は、ミライさんだったのかもしれません。
エゥーゴに属したあたりから、夫・ブライトは単身赴任のような状態でほとんど宇宙へ。地球に残されたミライは、おそらくワンオペでハサウェイとチェーミンという2人の子どもを育てたのでしょう。
また『逆襲のシャア』の中には、ミライとチェーミンがホンコン・シティのボロボロのアパートで暮らすシーンが出てきます。ミライ自身、名家として知られるヤシマ家の令嬢で、夫はロンド・ベルの艦隊司令まで務めているのに「そこまで貧乏なのか!」と驚いた方もいるようです。
具体的な理由は劇中でも語られていないので状況からの推測にはなりますが、本来ならミライは2人の子どもと一緒にシャトルでロンデニオンに向かうはずでした。そこに“政治特権”を利用したアデナウアー・パラヤがシャトルの順番に割りこんだことで、ミライとチェーミンは突然シャトルに乗れなくなります。そのためシャトルが運行再開されるまでの仮住まいとして、急遽あのボロアパートを借りたのではないか……というのが個人的な見解です。
そもそもずっと暮らしているにしてはアパートの室内に生活感がなさすぎですし(ミライさんが長年生活していたなら逆に汚すぎるのが不自然)、明らかにミライの身なりとも合っていません。大体、全員分の宇宙行きシャトルのチケットが購入できる資産があるのは間違いない上、さすがにブライトが家庭にお金を入れないような甲斐性なしとも思えませんし。
そんなミライにとって……というかノア家にとっての最大の不幸は、やはり息子ハサウェイが映画『逆襲のシャア』でしでかした不祥事です。モビルスーツを盗んだあげく、友軍機を撃墜するというあの事件から端を発し、映画『閃光のハサウェイ』へとつながっていく物語から目が離せません。富野由悠季氏の小説版とまったく同じ結末を迎えるのか、一ファンとして、とても気になるところです。
以上、『機動戦士ガンダム』を代表する3名のヒロインが、その後の映像作品に登場したエピソードを中心に紹介しました。プライベートの部分があまり描かれていないセイラはさておき、フラウとミライについては結婚して100%の幸せをつかんだかと言うと、正直“複雑”と言わざるをえません。結局のところガンダムのヒロインに、真の勝ち組など存在しないのかもしれませんね……。