■「閻魔相手に地獄の国盗りだ」
剣心との壮絶な激闘の末、限界を超えた体が発した炎によって志々雄の体は焼失した。その戦いが終わり、志々雄の側近だった佐渡島方治は日本の行く末に絶望し、獄中で自殺。いまわの際に方治が見た光景は、“地獄”にいる志々雄の姿だった。
「さっさと行くぜ」と方治を急かす志々雄。その目的を問う方治に、「決まってんだろ」「閻魔相手に地獄の国盗りだ」と語ったのがこのセリフのシーンである。
これが死にゆく方治の見た夢か幻なのかは分からないが、地獄に落ちても現世とまったく変わらずに“覇権”を目指そうとする前向きな姿勢は、いかにも志々雄らしい。
自らのことを「極悪人」と語っていたように、志々雄は悪であることを自覚している。漫画では主人公に敗れた悪役が改心して正義に目覚めるケースも少なくないが、志々雄を振り返ると彼の言動は最初から最後までブレることなく一貫していた。自分の信念を貫いた男だからこそ多くの読者を引きつけ、その言葉がいまだに忘れられないのかもしれない。