■ほかの隊士との貴重なやりとり

 そば屋で食事をしている煉獄杏寿郎のところに、部下の若い隊士がやってくる場面も注目のポイントだった。その隊士は煉獄のことを「炎柱(えんばしら)」と呼び、言葉の端々から常に敬意を持って接していることが感じられた。

 そして煉獄が隊士にそばをごちそうすると言ったとき、その隊士は「よろしいのですか?」と驚いていたが、柱と一般隊士の間には本来そのくらいの隔たりが存在するのだろう。これは竈門炭治郎たちが「煉獄さん」とフランクに呼び、フレンドリーに接していたのとは対照的だ。ちなみにその隊士の鎹鴉(かすがいがらす)も煉獄のことを「杏寿郎様」と丁寧に呼んでいた。

■元炎柱・煉獄槇寿郎の姿

 またアニメ第1話に煉獄杏寿郎の父・槇寿郎が登場したのもうれしいサプライズだ。原作漫画などでは「無限列車編」の煉獄杏寿郎の見ている夢の中に槇寿郎が登場するが、炎柱を辞め、剣士としての情熱を失った槇寿郎が、息子に冷ややかな言葉を浴びせた場面が印象深い。

 原作漫画をラストまで読まず、映画までしか見ていない人は、おそらく煉獄槇寿郎に対して良くないイメージを抱いていることだろう。しかしテレビアニメの第1話では、炎柱として人助けをする現役時代の槇寿郎が描かれていた。

 煉獄杏寿郎が炎の呼吸・壱ノ型「不知火」で鬼を倒した姿を見て、弁当屋のおばあさんは過去に槇寿郎に救われた場面を思い出す。鬼を斬り、納刀するまでの一連の動作は、杏寿郎と槇寿郎で完全にシンクロしていた。

 このシーンをテレビアニメの第1話に挿入したことで、映画までしか見ていない人も、おそらく槇寿郎の見方が少し変わったのではないだろうか。

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