■「現場に詰めるのが無理になったら、脚本だけでもやりたい」
宮さんは、富野由悠季さん(『機動戦士ガンダム』監督)と同学年で今年80歳。ジブリは宮さんが撮れなくなったら“おしまい”でしょう。中心になる監督がいなくなったらアニメスタジオは終わり。宮さんみたいなタイプの監督はもう出てこない。誰が継ぐとかじゃないんです。
今のアニメ界は落日ですね。デジタル化されて、作るものがみんな同じになってしまったように思えます。自分で作りたいもの作っているのは庵野秀明(『シン・ゴジラ』『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ監督)と、細田守(『竜とそばかすの姫』『サマーウォーズ』監督)、新海誠(『君の名は。』監督)、それからちょっと傍系のようなところにいる片渕須直(『この世界の片隅に』監督)の4人ぐらいでしょう。
そんな時代に、僕は、彼らとは違った考え方をしています。というのも、今はオリジナル作品をやりたいという気持ちがまったくないんです。
自分の色を出すのに、原作があるもののほうがやりやすい。この年齢になって、与えられたお題に自分がどう反応するかが面白いと思うようになりました。オリジナルだと“距離”を置けなくなってしまうんですよ。だから、仮に「『ドラえもん』の監督をやってくれ」とオファーがあったら、僕は喜んで受けるでしょう。ただ、受けた以上、内容は自分流にしますけどね。
僕も気がつけば70歳ですが、まだまだ続けていきたいと思っています。現場に詰めるのが無理になったら、脚本だけでもやりたい。
ただ、この仕事はオファーが来ないと始まらない。すべて世の中の都合次第です。
たとえば、「予算も公開も決まっているけど、中身がなくなっちゃったんで、なんとかなりませんか?」なんて依頼もある。そうやって、隙間を埋めてきたからこそ、僕はある程度、自分が好きなようにやってこられたのかもしれません。
やっぱり、宮さんとは全然違うんです(笑)。