■魘夢が「無限列車」に夢見たもの
魘夢が目指したのは鬼殺隊の柱を殺し、無惨がターゲットに挙げた炭治郎も殺して、心酔する無惨からさらに血を分けてもらうこと。そしてもっと強くなり、上弦の鬼に入れ替わりの血戦を挑むことを目標に掲げていた。
その魘夢が「無限列車編」にて炭治郎や煉獄杏寿郎たちと対峙。血鬼術で眠りにつかせ、その隙に手駒にした人間が“精神の核”を破壊するという巧妙な計画により、炭治郎たちだけでなく、柱の煉獄杏寿郎まで夢の世界にいざなった。
眠りながら本能で危険を察知するほどの手練れである炎柱、あるいは鬼殺隊に味方する鬼の禰豆子が乗りこんでいなければ、無限列車での魘夢の策はうまくハマったのかもしれない。そのときは魘夢が「無限列車」に夢見た、上弦の鬼になるという大目標も達成できたのだろうか。
しかし炭治郎と伊之助のコンビに敗れて死が迫ったとき、魘夢ははじめて恨み言や後悔の言葉を口にした。無惨に殺されかけたときに恍惚の表情を浮かべて、死を積極的に受け入れたのとは対照的な反応である。
もしかすると魘夢には、鬼舞辻無惨以外の存在に“劣っている”と自覚させられることが許容できなかったのかもしれない。だからこそ魘夢は上弦の座にこだわり、死にゆく間際まで「上弦の鬼」との強さの差について嘆いていたのかも……。