■感情をうまく表現できない伊之助ならではのセリフ

 最後は、煉獄が亡くなったあとの伊之助の名セリフ。目の前で煉獄を失った炭治郎は「悔しいなぁ 何か一つできるようになってもまたすぐ目の前に分厚い壁があるんだ」「俺は煉獄さんみたいになれるのかなぁ」と涙をこぼし、弱気になってしまう。

 炭治郎とともに煉獄の死闘を見届けた伊之助は、そんな彼を叱咤し「信じると言われたならこれに応えること以外考えんじゃねぇ!」「死んだ生き物は土に還るだけなんだよ べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ」「どんなに惨めでも恥ずかしくても生きてかなきゃならねぇんだぞ」と涙ながらに励ました。

 野生育ちの彼の「亡くなってしまったことを受け入れる」という考え方を見ていると、育ての親であったイノシシが亡くなったときもこのような気持ちだったのかと推察される。悲しむ炭治郎は、伊之助のこの言葉にきっと励まされたことだろう。

 しかし、そんな伊之助もけして感情を持たないというわけではない。人に優しくされて胸が暖かくなる気持ちを「ほわほわ」としか表現できないほどに言葉を知らない伊之助も、襲いくる悲しみに心のやり場がなく、泣きながら「修行だ」と叫び、炭治郎をポコポコと殴っていた。

 複雑な「悲しさ・悔しさ・やるせなさ」などの感情を抱きつつもうまく表現できない伊之助の様子がまるで小さな子どもを見ているようで涙を誘った。

 以上が、「無限列車編」に登場した名セリフの数々だ。どんなセリフからも、彼らがこれまでの歩んできた人生の深みや矜恃が伝わってくる。10月10日からはいよいよ新作エピソードを加えたテレビアニメ『鬼滅の刃』無限列車編がスタート。第1話では、煉獄杏寿郎が「無限列車」へと向かう道中の任務を描く新作エピソードが放送されるという。

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